Pico Tech - Identify Exe

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Identify.exe

Identify.exe is a commercial gamma spectroscopy software made by GBS Elektronik GmbH of Germany.

Identify は、ドイツの放射線測定機器メーカー、GBS エレクトロニクスによって開発された、ガンマ線スペクトル解析用のソフトです。
古いPCや、昔のWinCE (WindowsMobile)などでも動く軽いソフトで、それでも機能は十分あり、また、素人にとっては非常に学習効果の高いソフトだと思います。

ポリマスターのPM1703MO−1A/Bなど、核種判定機能付きの機種を買うと、このソフトの古いバージョンが、核種判定エンジンとして(OEMみたいな感じで)含まれて居ます。
インストール先は、C:\Users\USERNAME\AppData\Roaming\Polimaster\PM PRD PoliIdentify\Identify といったところです。

ポリマスターのソフトは、ポリマスターのサイトたろうまるさんのところ(ポリマスター正規代理店)などからダウンロードが可能ですが、測定器を購入してない人が試用又は継続使用する権利があるのかは、よく調べたことがないので、各自で確認してください。

PM1703MO−1A/Bの付属ソフト、又はPM1406を買った人の日本代理店承認の使用、という形でなくて、このフトの最新正規版を買おうとすると結構なお値段がする様です。日本の代理店はアドフューテック http://www.adfutec.com  と Seiko EG&G http://www.sii.co.jp  (最新デモ版を試したところ、古いバージョンよりもWin7で使用中に「こける」割合が若干高いような気がしました。)

このソフト(Identify.exe 自体)は、インストール不要で、単体運用が可能なので、本体と付属ファイルをコピーさえすれば、どのフォルダーに置いても動きます。
スペクトルファイルは、GBSエレクトロニクスが作ったMCA-166, MCA-527の他、KromekのGR−1などが採用しているSPE形式と、Ortecのchn形式を読み込めます。最新版は、他の形式も読めるかも

最新バージョンのデモ版は、ここからダウンロードして試してみることが出来ますが、機能が限られています。
http://www.gbs-elektronik.de/en/downloads/nach-kategorien/software/

簡単な使い方は、スペクトルファイルを読み込んで、Peak search ボタンを押す、というもの。
そうすると、ピークを見つけ、それに適合するかもしれない核種のリストやピークのデータなどを生成しますので、
Nuclide report をクリックするとそのリストを見ることができます。
出てきたリストの、それらしき核種の上で、左クリックすると、スペクトルの上に、緑の線で、その核種に見合ったカーブを表示しますし、ダブルクリックすると、あるべきピークの位置にエネルギーと確率を示すマーカーが表示されます。

どなたかが測定した福島のなめこのスペクトル(Ortec chn形式)のピークサーチをして、K40をダブルクリックして核種情報を画面に表示させた例。

この、核種リストは、必ずしも正確なものではないのですが、リストの核種をダブルクリックした時にその各種の計算上のスペクトルが表示される為、「ありえない核種」をあると思ってしまう可能性が低くなります。

以下は、同じスペクトルの低エネルギー部分を拡大し、全核種リストでBa140をダブルクリックして情報を表示させたものですが、確かに537KeVの近くには、ほんのりとピークがあるのですが、162KeVの方は山があるようには見えず、Ba140が存在する、とは断定できないのがわかります。

次の例は、955KeVの「ピーク」として認識されたエネルギーについて、適合するかもしれない核種のリストをだし、その中の I132をダブルクリックして情報を出したものです。
I−132の954KeVは、適合するのかもしれませんが、その左の667KeV と 772KeV付近には、あるべき筈の山(緑で表示された計算上のピーク)がなく、これもおそらく違うことが分かります。

この様に、このソフトを使うと、スペクトルの山について「視覚的」にも、徐々に慣れてくるという効果があります。

さらに、それだけでなくて、このソフトは「定量」をより正確に行うために、測定器の情報を入れる設定画面があり、そこでシンチレーターの結晶の種類(HPGE,NaI,CsI,CZT)、その表面積と奥行き(または、標準の3インチNaIと比較した効率)、シンチレーターを包む素材の種類や厚さ、吸収材を使っている場合はその情報、同位体からの距離、分解能や効率のカーブ、などなどを入れて、それに基づいたピークの検出や、核種判定、そして定量を行うようになっています。

下の画面は、測定機情報の設定画面で、良くある測定器の簡単一発設定の選択リストを見ている状態です。

エネルギー校正についても、Eu152線源を利用した自動校正と、手動の2点、又は3点校正があり、手動の場合でも、カーソル位置を特定の核種のピークに簡単に設定することが出来たりするので、スペクトル取得時に多少の温度などによるずれがあっても、特に困りません。(ずれてないに越したことはありませんが)

また、分解能(FWHM)を自動、または手動で設定する機能もありますし、4種類までの設定を記憶させて、直ぐに呼び出して切り替えることも出来たりします。

そして、核種情報についても、核種ライブラリーを切り替えることが出来るほか、どのピークまで含めるか、などを全部指定でき、自分の好きな核種ライブラリーを構成して使用することが出来ます。

以下は、核種の選択をする画面で、このように半減期による選択、崩壊のタイプによる選択、番号による選択が出来ます。

何故私がこのソフトのことを紹介するのか?と言うと、たまたまこれが私が接した最初のスペクトル分析のソフトだったのですが、他のソフトもちらほら触ってみてこのソフトの良い点がより分かるようになってきて、例えばTheremino Mcaの拡張強化計画においても、このソフトのように「学習効果」の高い機能を盛り込んでいきたいと思ったからです。詳しくは、こちらのページをご覧下さい。  Theremino Mca To Do Ja

もちろん、キャンベラとか、他の会社の高価なソフトだと、測定器だけでなく、遮蔽体や検体を含めた情報を入れて校正に使ったり、とか、出来るような記述も見たことがありますし、もっと素晴らしいソフトも色々あるかと思いますので、もし、そういうものを触ったりする機会があれば、勉強して参考にしたいと思っています。

このソフトとの他に、KromekのKspecというのも、ダウンロードしてちょっと試してみました。ROIを決めて定量する、良くある法式で、多分それが一番手っ取り早くてかつ信頼性も高いのかもしれないですが、Identifyのように、山が色々見える方が、面白いし、勉強にもなると思いました。
数値を見て、それを感覚的な理解に結び付けられれば、「お子様向け」の視覚情報は、無くてもよい、とも言えますが、両方あれば、その方がよいだろうと私は思います。
抽象化された情報から具体的で的確なイメージを「再現」したりできるのは、大変役に立つ能力ですが、誰もが容易に出来るわけではないでしょうから。
ただし、Kspectは、色々なことができるC#によるスクリプト機能が既に付いている点は、とっても良いと思いました。ThereminoMCAにも、ThereminoScriptを利用した同様なものを組み込めるだろうと思っています。

追記:

Identifyには、もう一つ良い機能がありました。
それは、QuickIDと呼ばれているもので、スペクトルの閲覧を高速に出来るだけでなく、それぞれのスペクトルに対し、即時にピーク検出と核種推定を行い、結果をスペクトルとリポートに表示する、というものです。

また、このソフトには、かなり詳しいドキュメント(ワード形式など)が含まれており、どういう計算をしているのか、とか、私は分かっていないのですが、分かる人にとっては参考になる情報なども含まれています。(最新バージョンのデモ版には、残念ながらこのドキュメントは含まれていませんが、ポリマスターやたろうまるさんでダウンロード出来るものにはドキュメントも含まれています。)

以上簡単なIdentify.exeの紹介でしたが、もし、他に参考になるソフトをご存知の方がいらっしゃいましたらご連絡下さい。

   連絡先:  nkom あっと pico.dreamhosters.com

ちなみに、今まで触ったのは、Kspect,Identify, OpenGamma,Specanal (wpkview)など。よく知られたFitzPeakは、デモ版がWin7では動かないようなので、まだ試してません。VirtualBoxのWinXPに入れればよいだけなのですが。

また、OpenGammaの発展版のOpenGammaXをコンパイルしようとして、Qwtのコンパイルではまって、挫折しかけているところ。MingW版、VS版とか、数種類の組み合わせで色々やって見たのだけど、いまだに成功していません。よくあるWin32関連のヘッダーの問題みたいなのですが、詳しく調べるのが面倒くさいのと、他のことで忙しいのでさぼってます。

セイコーのガンマスタジオやスペクトルナビゲイターも、カタログを見ると楽しそうなので、参考にしたいです。

ガンマスタジオ http://www.sii.co.jp/jp/segg/files/2013/03/file_PRODUCT_MASTER_1654_GRAPHIC02.pdf

スペクトルナビゲイター http://www.sii.co.jp/jp/segg/files/2013/03/file_PRODUCT_MASTER_1653_GRAPHIC02.pdf

さらには、出来合いの核種分析ソフトではなく、統計ソフトや数学ソフトなどを使ってピーク検出や計算などをやる方法も勉強中で、 Peak Fit With R や Peak Fit With Octave , Peak Fit With Python などに集めてきた情報や、ちょっと試して見たことをまとめてあります。Gnuplotでも結構出来たり するようですし、他にもSage(というかPlot以外ほとんどScipy?)を使った方法もあるようなので、そういうのも調査していく予定ですし、 Software Projects のページにも、OpenMCAなど他のソフトや使えそうな情報も集めてあります。


おまけ

Identify.exe は、娘核種もひっくるめて表示してくれるので、一々Bi214,Pb214とか、一つ一つ選ばなくて済むので、面倒がないです。

もちろん、娘の一人一人のスペクトルを見ることも出来ます。

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Identify.exe の使い方

テレミノMCAで測定する時に、AutoSaveの設定で、少し下の方にある
「SPEファイル形式」でスペクトルを保存すると、
それを読み込ませることが出来るので、少し面白くなります。
(Fileメニュー、Load Speytrumで、読み込みます)

SPE形式のスペクトルを読み込んだら、「Peak Search」のボタンを押して、
「nuclide report」のラジオボタンを押すと、
判定された核種のリストが右上の欄に出るので、
その中の核種を左でクリックすると、それに対応する
山が、スペクトルの上に緑で表示されます。

ダブルクリックすると、ピークの位置と分岐率も表示され、
他の核種をクリックしたり、ダブルクリックしても、
その状態は維持されます。

|< << < > >> >| で、スペクトルの横軸の表示位置を変更。
>< <> 0 でズームの変更が出来ます。

スペクトル画面上で左クリックすると、横位置が動き、
左ボタンでドラッグすると、その部分を拡大表示します。

右クリックだと、最寄りのピークが画面の中央になります。

つづく

Last modified : Sun Oct 4 11:01:49 2015 Maintained by nkom AT pico.dreamhosters.com