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予防措置としての測定 Preventive measures

安全に関わる仕事などをしていれば、(常に、とは言いませんが)「予防」にある程度時間やお金や労力をかけた方が、問題が起こってしまったその後で、色々な「対策/後始末」をするよりも効果的である、というのはご存知の方も多いかと思います。

放射線測定においても、その方法や測定器の選択について、「予防」の観点に立って考えると分かり易いと思います。


例えば、「子供の給食の検査」については、理想的には全部なんでも計るのがいいのですが、現状では、時間的にも労力もお金も足りません。
もし、これを本気でやろうとするなら、ママさん、パパさん、そして爺さん婆さんボランティアの参加と、測定機の大量購入が恐らく必要になるでしょう。
現実的に見て、一部の地域では多分十分実現可能でも、全国的には、出来ない場所の方が多いでしょう。

ならば、「子供や職員が食べてしまう放射線物質の量を減らす」という「予防」の観点で言えば、どんな食品に放射性物質が多いのか、という特定をする為のサンプリングと、通常は汚染がほとんどないものを念の為に計り続ける為のサンプリングを行う、といった方法があるでしょう。


一方、給食に「出された」食品を全部まとめて計る調査、というのも行われていますが、これは「過去の既に子供たちが食べてしまったもの」についての情報を得る為の測定なので、「予防」の観点からは良くない方法と言えます。もちろん、「どれだけ食べてしまったのか」を調べ、「どのくらい病気になったか」などを調べるのも将来の行政の方針を立てるのには有意義なので、「何年、何十年か先の人間の予防」には役立つでしょうし、沢山食べてしまった子供を発見したら遅まきながら対策を講じる、という「後手後手の後始末」も出来るかもしれないので、やらないよりやった方が良いかと思います。しかし、今現在の「予防」という観点からなされている調査ではない、つまり「子供を守る」という意図の調査ではないので、他の方法も一緒にやらないのであれば、子供を使った人体実験と思われても仕方ないと思います。

また、「給食全部」をまとめて計ると、一部の食品に高濃度の汚染があっても、全体として薄まって報告されたり、検出されない、という弊害もあり、更には「どんな食品を避ければよいか?」という情報が得られないので、給食用の食材の買い付けにも役立ちません。

次に、ガラスバッジによる測定も、「浴びてしまった放射線量」を測るものであって、「予防」、つまりは「子供や大人を守る為」の測定ではありません。これらの測定は、食べ物のごちゃ混ぜ検査と同様に、やらないよりやった方が良いと思いますし、それも後々役に立つでしょうが、今現在の人々の「被爆量を減らす」という意図で行われているものではなく、他の意図で計画/立案されているのは明らかでしょう。


たとえば、私が (素人の為の)測定器の選択のコーナーで、比較的感度の高い携帯用測定機の購入を勧めているのは、「予防」の観点から、線量の時間や場所による変化に素早く対応し、線量の少ない環境に身を置く行動や決断を取り易いと思うからです。
また、ガイガーカウンターや感度の低いシンチレーターを余り勧めないのは、測定に時間がかかって無駄に被爆したり、変化をや兆候を掴めずに被爆を避けられなかったりしてしまう可能性が高くなってしまうからですし、感度の低い測定機でも良く分かる程の(高い)線量のある場所には、長居をしない方が良いだろうと思っているからでもあります。

もちろん、現在の日本では、おそらく多くの人の感覚が既に麻痺してますし、「核実験の時代にも汚染はあった」とか、「チェルノブイリによる汚染も相当あった」とか、あるいは、東電や政府の発表に見られるように、驚くような内容の情報を「小出しに」し、ちょぼちょぼと出し続けることによって「慣れさせ」、感覚を麻痺させるようなこともしますし、更には「被爆ゼロは無理」、「日本中どこへ逃げても被爆する」など、こういう問題について考えたり測定したりする意欲を削ごうとする努力もなされているので、よほど注意していても、薄ぼんやりと汚染まみれに慣れてしまうことになりがちです。しかし、それは、「予防」の観点からは、あんまり好ましいことではありません。


加えて、残念なことに、政府や東電、そして「専門家」などもそうですが、生産や流通に関わる企業においても、「不安を恐れ、忌み嫌う」私たちの習性や、「安全バイアス」。「安全洗脳」もあって、「予防の観点」で考えない、行動しない人々がとても多く居ます。

従って、「予防」の為のリスクの予想をするのであれば、現状においてリスクを過小評価してしまう傾向が一般には強い為に、どちらかと言えば、その「反対の方向」に多少偏っているくらいで丁度良いのではないか、と、私は思います。


更に、「安全論者」と「危険論者」の間の感情的対立が、色々な面でアラブとイスラエルの近親憎悪の宗教戦争のようになってきており、互いに「あら捜し」をしたり、間違いをあげつらったりして対立が激化したりしています。この結果、反目や対立を嫌い、「感情の荒波」に敏感だったり不慣れな人が疲れて関心を失ったり、測定を止めてしまったりする、という「予防」にとっては好ましくない事態もちらほらあるようです。


そして、一部のプロ、専門家の人たちが、素人測定やアマチュアグレードの測定機を鼻で笑ったり、「使い物にならない」などと切って捨てる場合もあるようです。(その逆に、色々と助言したりなされている方も見かけますが)

確かに、素人が特に安い測定機を使う場合、測定の精度が欠けるのは避けられませんし、間違うことも多いかもしれません。しかし、多くの初心者が「裾野」を広げることは、その分野の活性化を促し、機器や技術の発展や価格の低下など、様々な相乗効果が期待できるので、心の広い人ならば歓迎したり応援するのが当たり前だと私は思いますし、私が個人的に専門とする分野では常に「裾野の拡大」を視野に入れて仕事や活動をしてきました。

それは、右も左も分からない初心者たちが、将来の専門家であったり、機材の充実に貢献する人柱候補生であったり、頼りになるアマチュアになるかもしれないですし、色々な「業界特有の見方考え方」に染まっていない人たちの意見や疑問には、本人たちが思うよりも参考になる場合が多いからです。私が、とある業界などで人様に指導するような仕事をしていた際には、お金を頂いた上に、訓練をしている人たちが学ぶ以上に、また、学べば学ぶほど、私の方が様々なことを学ばせて貰ったものです。ですから、素朴な疑問、一見バカみたいな意見や疑問でも、一緒に考え、相手の意思や根気が続く限り、納得がいくような実技や説明を試みましたし、それもまた、私自身にとっても非常に役立ちました。

放射能測定の分野では、私はにわか勉強中のど素人ではありますが、それ故に他の素人が遭遇するであろう問題点なども分かりやすいので、学習に役立ちそうな情報などもこうしてまとめているわけです。

また、「裾野」が広がることは、「観測点」が増え「データ」も増えることを意味し、見逃してしまったかもしれない事象を発見できたりして「予防」にも役立つでしょう。


次に、「予防」の観点からは、測定や機器の操作が煩雑であったり時間のかかるものは、特に「素人測定」を前提とする場合、あまり好ましくありません。

良く訓練されたプロやボランティアが仕事や公的な活動として行う分には、測定に長時間かかったり、下準備が難しかったりしても、それは「仕事や活動のうち」なので、あまり問題がありませんが、「素人」の場合、時間が掛かりすぎたり、難しすぎれば「やる気」の喪失にも繋がりますし、何より時間的、技術的に不可能だったりします。

従って、出来るだけ簡便で、そして時間がかからない測定の為の機器や方法の選択が重要になってくるわけです。

たとえ、携帯用の測定機でも、2ccくらいかそれ以上のシンチレーターを私がお勧めするのも、それ以下の感度だと測定に時間がかかったり、ある程度の精度を得る為には、測定を繰り返したりする必要があったりして煩雑になるからです。

もちろん、ガイガーカウンターの中にも、大きくて感度の高いものは存在しますが、市販の製品の中にはあまり見かけません。SBM−20などを二本つかった製品なら、感度はましでしょうが、それでも小型シンチレーター式の10分の1以下でしょう。

食品検査にしても同様で、チャッピーの3cc版やアルマジロの1インチ版でも遮蔽や汚染の程度によっては十分検出可能だと思いますが、時間がかかったり、汚染が酷くない場合は検出出来なかったりするので、2インチ以上の結晶を使った測定器を食品検査用にはお勧めしているわけです。

また、感度の良い測定器を使うと、(検体にもよりますが)見る間に結果が出てくるので、測定の効率が良いだけでなく、使っていて面白いし、「良く見える」というのは「分かりやすい、学習しやすい」ということにも繋がり、「予防」に必要な知識や技術の習得を助けます。


このように、「予防」といった観点を据えて、色々考えてみると、測定機の選択にしろ、測定方法にしろ、住む場所などの選択にしろ、明らかになってくることが多いのが再確認して頂ければ幸いです。


また、過去の公害事例などでも、「予防の観点」に欠けた対応が、被害を大きくし、体と、そして心の傷を大きくしてきた点も、こういう情報などで思い出すと良いかもしれません。
http://togetter.com/li/310943


(注) 英語のページ名の「Preventive measures」は、だじゃれ狙いでは、ありません。単に、日本語の「測定」が、英語の予防措置の「措置」に被っただけです。


Last modified : Tue Mar 4 08:34:37 2014 Maintained by nkom AT pico.dreamhosters.com