Pico Tech - Sirouto Sokutei Memo2

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素人スペクトル測定で押さえておくと良さそうな点など

素人測定の場合、測定環境の最大の弱点、盲点、
そして、 一番簡単に、劇的に改善できる点 は、

          「測定者」

つまり、 「私たち自身」 の可能性が圧倒的に高いです。


測定システムの基本的な仕組みを理解していないと、

     「基本的、根本的な誤解、勘違い」

をしやすい。


「根本的な勘違いや誤解」があると、多くのことを
間違って学んだり、「悪い癖」が付いてしまい、
長い間その影響を受け、そして、そこから抜け出すのが難しくなる。


性格的に、 短気な人、直ぐに断定しないと気が済まない人、
自分自身よりも、まず測定器や測定システムを疑いたがる人など
は、
誤解や勘違い、そして、珍しい仮説波に囚われやすいので要注意。


ガンマ線スペクトル測定の基本的な仕組み:

1.放射性物質  =(エネルギーの異なる)ガンマ線=> 

2. シンチレーター =(強さの異なる)光=>

3.  PMT(光電子増倍管)、PD(フォトダイオード)など =(高さの異なる)電気パルス=> 

4.   ADC(アナログからデジタルへの変換機)、サウンドカード =(パルスの波の)数値=>

5.    MCA(マルチチャンネルアナライザー) =(パルス高を区分けしてカウントした)スペクトルデータ=>

6.     スペクトル表示、解析ソフト =(スペクトルや解析の)数値情報、視覚情報=>

7.      測定者 =(その時点の知識や経験など基づく)理解、誤解=> 学習、誤学習、行動など

4のADCのところで、検出器から送られてくる波の様な電気情報(高さの異なる沢山のパルスが
流れてくる)を、数値情報の波に変換します。

テレミノMCAやベクモニでは、測定器に付属したサウンドカード(デジタルアルマジロなど)や、
PCに内臓のサウンドカード、又は、USB接続の外付けサウンドカードが、この部分を担当しています。


測定器がADC(サウンドカード、オーディオコーデックとも呼ばれる)を含んでいるかどうかで、
測定器とPCの間のケーブルを「生の電気信号」が流れるか、「数値情報」が流れるかの違いがあります。

測定器(アルマジロなど) =電気信号の波(音声入力コード)=> 

PC内臓、外付けサウンドカードのADC =数値信号=> PCやスマホのMCAソフト

測定器(デジタルアルマジロなど) =電気信号の波=> 

アルマジロに内臓したサウンドカードのADC =数値信号(USBケーブル)=> PCやスマホのMCAソフト

「生の電気情報」は、ケーブルやコネクターの質や長さや取り回しや保守、
そして周辺の電磁波などなどで影響を受けたりするのに対し、
「数値情報」は、影響を受ける可能性がかなり低くなります。

従って、デジタルアルマジロやSovtubeの機械の方が、
「ケーブルやコネクター周りなどのノイズ問題」については有利です。

ただし、どちらの場合であっても「測定器の内部でのノイズや電磁波の影響」は、受けます。


基本その1:

測定器から、(電気、又は数値で)PCに送られてくるパルスの情報に異常があったら、
スペクトル測定がうまく行かないのは、当たり前。

なので、パルス情報を確認するのは、重要。
問題がある場合は、エネルギー(パルス高)の低い方から高い方までの様子を確認する。

一番低い方は、大抵ノイズにまみれていて、それは正常です。
どれくらいのエネルギーまで、ノイズまみれかは、測定器によります。
なので、30KeV以下とか、50KeV以下とか、100KeV以下とか、
測定器の守備範囲以下のノイズは気にする必要はありませんし、
たとえ気にしても、それ以上どうにもならない場合も多い。

高い方も同様。


基本その2:

マイク入力(音声入力)のボリュームは、低めに設定した方が良い。
一度設定したら、理由も無く変更しない。
変更すると、横軸の再調整が必要。

測定中に、もしこれが変わったりすると、
校正の異なるスペクトルを混ぜることになるので、
測定はやり直しになります。

ネコがマウスをネズミと間違えて動かし、たまたま
ボリュームを動かしてしまったりすると悲劇です

どのボリュームが「最適」かを判断するには、知識や経験が必要で、
スペクトル測定を始めたばかりの段階では、良く分からないので、
基本的には、「10以下」、2とか4とか、その辺を試すと良いかも。
(奇数は受け付けない、設定しにくい場合もあります)

良さそうな設定が少し分かったら、それで当分固定して、
「ゲイン」で大まかなエネルギーの校正をして、
校正スライダーで微調整を行う。

これは、ボリュームを変えると、場合によってはスペクトルの出方が
変わってしまうので、BGや試料のスペクトルの比較が出来なくなったり、
理解が遅れたり、誤解を生み出すからです。


基本その3:

スペクトルは、「数値情報」です。

テレミノMCAなどのソフトは、その数値情報(統計情報)を
見やすいように視覚化したり、解析したりして表示します。

なので、例えば「定量的」なことをやりたい場合、
BGスペクトルのデータと、検体のスペクトルのデータの
特定の範囲(ROIと呼んだりします)のチャンネルのカウント数を合計して、
測定秒数で割って1秒あたりのカウント数(レート、計数率、cps)に揃え、
そのBGの面積(BGレート)と、検体の面積(Gross Rate,試料のレート)の差を見ると、
その部分に山があるのなら、山の面積(Net Rate,ネットレート、真の計数率)が得られます。

これは、現在作業中の次期バージョンのテレミノMCAのピーク情報機能や、
ベクモニやKスペクトトやSPViewerなどでも出来ますが、
エクセルやGnuplotや人力計算でも出来ることです。

こういう数値情報をそのまま扱うのではなく、スペクトル画像に線を引いたりして、
それを計算して「再数値化」すると、元の数値情報になかった誤差、ノイズ、歪みを
混入することになります。

つまり、「数値情報 =計算=> 数値情報」 という操作の代わりに
「数値情報 ==> 視覚情報 =定規=> 数値情報 =計算=> 数値情報」 
という感じで「余計な操作」が加わっていて、しかもその余計な操作が
根本的な誤解などから正確に行われないと、結果の信頼性は期待できません。

スペクトルという「数値情報」を的確に「数値的」に理解するには、
表示の際にスペクトルを歪めてしまう操作をしない方が良いです。

テレミノMCAの場合、画面右側の中間にある「高エネルギー強調するスライダー」を使うと、
目盛りの数値とスペクトルが一致しなくなり、「数値情報」として使えなくなります。
これをやってしまうと、カウント数やそのレート(cps)を視覚的に把握するのが
難しくなり、また、カウント数とスペクトルの信頼性の関係を学ぶのも阻害します。

これに対し、Ylogボタンは、目盛りとスペクトルの関係を正しく表示します。

また、スペクトル画面で、マウスをクリックしてマーカーを出すと、
画面下に、そのエネルギー位置のチャンネル番号やカウント数やレートを表示し、
これを使うことで、そのエネルギー位置のカウント数を確認できます。


基本その4:

スペクトルの質は、カウント数の大きさで決まると言っても良いほどです。
カウント数が少ないと、スペクトルはバラツキで乱れ、ギザギザになります。

カウント数は、普通は測定する時間が長ければ増えます。
カウント数は、測定する試料(検体)の放射能が高い方が多くなります。
カウント数は、測定器と検体が近いほど高くなります。
カウント数は、測定器と検体の間の遮蔽が少ないほど高くなります。

なので、質の高いスペクトルを得るには、測定時間を長くしたり、
放射性物質の量や濃度を高めたり測定器と検体の関係を
密接にしたりするのが常套手段です。

また、測りたい対象の放射能と、背景(BG,バックグラウンド)の放射能の
差が大きいほど、対象とする核種の山は綺麗に出ます。

なので、検体のカウント数を高める工夫と伴に、
BGのカウント数を低くする工夫も大事です。

そして、測定中に、現在の(興味のある部分の)カウント数を意識し、
それと照らし合わせてスペクトルの変化、成長の様子を見ることが、
色々な理解を深めることになりますし、そうしないと、誤解を深める
結果になることもあります。


基本その5:

スペクトルの山が大きく綺麗に出ている場合、少々変な方法を使っても、
定量的な推測をそんなに大きく間違ったりはしません。
これは、利点でもありますが、不幸な結果を招くトラップとしても働きます。

山が大きく、カウント数もそこそこある「簡単なケース」の場合、山の高さだけを、
目盛りのcps表示で読んだりして比べても、そこそこの結果が出るわけです。

しかし、山の高さが、スペクトルのベースラインのギザギザや乱れの振幅幅に近くなると、
数値情報を真面目に計算してさえも、誤差が大きくなり、そして、確かさも減少し、
山がある様に見えたとしても、それがスペクトルのギザギザや乱れによるものなのか、
それとも本当の山なのか、断言できなくなります。

ところが、スペクトルの乱れ具合、ギザギザの幅の意味を理解しないと、
山の高さが低くなると、色々とどんどん難しくなる、というのが分からず、
「簡単な時に(たまたま)うまくいった方法」でもって、そのまま通用すると
思ってしまうことがあります。

酷い場合には、「スペクトルの乱れで、(小さな)山が出たり出なかったように見えたりする」とか、
「スペクトルの出だしの山の位置も高さも正確ではない」といった基本的な理解が欠けていると、
測定器やソフをト疑ったりしてしまう例もありました。

まして、カウント数が少ない初期状態では、測定器の良さも悪さも良く分かりはしません。

従って、「微量の汚染を知りたい」といった理由から、小さい山しか出ないような検体を
測る場合には、測定環境を安定させる努力や測定時間の延長などもそうですが、
何よりも、測定者自身の知識や経験が飛躍的に要求されるようになり、
どんどん難しくなる、という点を「最初から」押さえておくと良いでしょう。

また、微量になると、まず、「定量の精度」が下がり、
それから、「定量なんて無理」になり、
そして、「在るか無いかすら断言できない」状態になり、
最後に、「まるっきり分からない」状態になります。

なので、自分が持っている測定器で一番微量の汚染を検出しようと試みる場合、
それは、「定量なんて無理」なレベルの汚染の
「在るか無いか」をなんとか予想してみる、
といったレベルになります。

私の現在の測定環境だと、測定時間やその他の色々な要因にもよりますが、
検体の中に10Bqくらいのセシウム137が含まれていると、
量的な推測も桁違いには外さないで済みそうです。
それ以下だと、どんどん難しくなり、注意が必要になります。

これは、手製のマリネリに一杯に1kgくらい詰め込んだとしたら、10Bq/kgくらいの濃度です。
ちなみに、鉛の遮蔽が8cmで、測定器は2.5インチのCsIの場合です。

検体の中に3Bqくらいのセシウム137が含まれていると、
間違えている可能性もまだ少しはあるかもしれないけれど、
「山が在るか無いか」は、まあまあ自信が持てます。

山の高さや面積、については、まだ比較も出来るし、予想も出来るかもしれないけれど、
信頼性はどんどん下がって行きます。

この辺からは、BGの質とか、測定環境の安定性が、物凄く大事になってきて、
「素人測定」としては、難しくなります。

それ以下になると、そもそも在るか無いかの判断がどんどん難しくなって、
0.3Bqくらいまでは、頑張ると山が見えるように思える場合もありますが、
気象状態とか太陽の活動とか磁場とか近所の工事とか、そういうことを含めて
色々と気にしたり、工夫しても、難しいです。

量的な推測は、まあ試しに計算してみました、という程度かも。
それを「何かの判断の材料」しかも、自分の健康や生死、
あるいは、「他人様の生死」に影響するような判断の材料にするのは
危険すぎるでしょう。

「安全性重視」でもって、「(少しでも)疑わしい場合は、危険側の解釈をしておく」
というのであればともかく、「これくらいなら食べてもいいだろう」という基準として
使ってしまうと、「御用学者の100mSvまでは安全」みたいなザルになります。


まとめ:

検体に含まれる汚染の量(Bq)がカウント数に大きく影響するので、
「重量当たりの濃度(Bq/kg)」に注目しすぎると誤解する。

カウント数が低いとスペクトルが乱れ、毎回違った出方をする。

ギザギザや乱れている質の悪いスペクトルでは、量的な推測はもちろん、
山が在るか無いかの判断も、難しくなる。

測定環境に於ける最大の弱点が何なのか?と考えて対策しないと、
誤解や勘違いの「症例集」になってしまう。
(同じ事をやらないようにすると、間違いを避けるのに役立ちますが・・・)

「測定者」の質、しかも、
「とっても基本的な事柄に対する理解の不足」が、
一番の問題点になってしまうこともありますが、
逆に言うと、それは一番改善できる可能性があるところで、
しかも、(時間はかかるかもしれないですが)お金も必要ないので、
劇的に改善されるポテンシャルを秘めている、と、
そう見ることも出来る、というお話でした。




これは、カナダの腐葉土約14gを26時間測ったスペクトルです。
検体の中には、多分0.5Bq以下のセシウム137しかなく、
一日以上測っても、「山みたいなもの」が、「セシウム137の位置から結構はずれて」
見えてはいるものの、「見えました!」と断言出来るスペクトルではありません。
どんな検体か全く知らないで測ったら、「なんか疑わしい」と思うけど、
在るとも無いとも断言できないスペクトルです。
BGが24時間程度の測定だったので、これ以上はあまり変化がないでしょう。
ちなみに、1インチのアルマジロだと、240時間のBGを測って、
260時間検体を測定したのと似たような感じかも。

以下は、同時に走らせていた別の設定の異なるテレミノMCAで
上記の検体の8時間のスペクトルをBGとして(灰色)、その後4回、
30分の測定をした結果です。
スムージングは、V6.3までのテレミノMCAの100%と同じくらいにかけてあります。

1インチのアルマジロだと、3昼夜のBGを取って、4回、5時間づつ測ったのと似た感じ。
(測定環境が「非常に」安定しているのでもない限り、スペクトルはもっと乱れるかも。)

セシウム137の位置でのカウント数は、まだまだ10から20の間で、スペクトルも
暴れていて、「見る人によっては」ピークが出たり出なかったりしている様に
思えるのかもしれないですが、単にカウント数が少ないので乱れているだけです。

なお、画面の下のカウント数やcpsは、「生スペクトル」のものなので、
表示されているスムージング後のものとは異なっています。

四つ一緒に出してみるとこうなります。画面下のマーカーの情報は、BGの数値です。

高エネルギー強調用スライダーを「乱用」して、スペクトルを歪めてみました。
K40の位置で、60倍ちょっと、Cs137の位置で30倍ちょっと、高くなっています。

ちなみに、現在作業中のバージョンは、メールなどで希望をなされた方にテストして頂いています。
まだ、バグや作ってない部分や改修予定の部分がありますが、既にV6.3と比べると
色々な面で格段に使いやすくなって、機能も追加されています。

ただ、ドキュメントも作り始めていないし、作業がまだ残っている上、
私の時間が少なくなるかもしれないので、一般公開は未定です。


日本語ページインデックス に関連情報がありますので、ご覧ください。


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Last modified : Fri Oct 3 16:14:01 2014 Maintained by nkom AT pico.dreamhosters.com