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テレミノMCAのちょっと詳しい話
テレミノMCAは、他のスペクトル計測用のソフトと較べて、違っている点が幾つか有り、出来ることや出来ないこともあったりしますので、特徴などを少し詳しく解説しておきます。
- テレミノMCAは、誰でも改造、改良が出来るオープンソースのフリーソフトです。
多くの他のソフトと違い、機能を拡張したり、動き方、見え方を変えたり、自分の使いたいソフトにすることが出来ますし、実際に、私がこのソフトを拡張しているのも、元々自分が使うのに必要だった機能を追加したのが始まりです。
イタリアの本家の他に、核種判定支援機能を追加した方や、スペイン語表示の対応を行った方など、各国の人が自由に参加して無償で作業を行い、無償で提供している「ボランティアウエア」で、アマチュア用の測定機材で手軽にスペクトル測定が行えるようになっています。
従って出来ることには限りがありますので、「完璧」には程遠い状態ですが、自由に改造できるスペクトル測定ソフトで手軽に利用できるのは現在これだけですので、欲しい機能、足りない機能は自分で追加して、より使いやすい強力なソフトにしましょう。
- テレミノMCAには、スペクトルの全体を通常の測定ソフトの様に「積算モード」で表示する以外に、指定の秒数の「移動平均」でもって表示する「積分モード」があります。
この為、テレミノMCAは、サーベイや定点モニタリング用のソフトである、と誤解される場合もありますが、単に他のソフトにはない機能が付いているだけで、特定目的の為のソフトではありません。アマチュアが趣味で測定するのに使われたり、学者さんが、教育用や安くて手軽な試験用に使ったり、汚染の検出や比較に使われたり、色々な使い方があります。
- テレミノMCAは、以前は、「スペクトルの(全体的な)形」を見ることに主眼があったようで、目盛りはあってもそこに数値は無かったり、標準の表示方法がスペクトルの一番高いところを自動的に画面の一番上に合わせる方法で、記憶させたRef123などの他のスペクトルとの量的な比較が難しかったりしました。私が拡張を始める直前辺りに、ようやく画面の表示を固定するモードとその為のボタン(Maxボタン)が追加され、量的な比較が少ししやすくなっていた状態でした。
そこで、cps(1秒当たりのカウント数、カウンツ パー セコンド)とカウント数を切り替えて、目盛りに表示出来るようにしたり、ズームや横軸の校正などの操作をスライダーで行うだけでなく、数値ボックスも追加することによって、より細かく、そして思い通りの位置に設定したり、現在の設定の正確な様子が確認できる様にしました。
しかし、テレミノMCAには、放射性物質の定量分析をする機能はまだ付いていませんので、例えば食品や土壌を測って、キロ当たり何ベクレルの汚染があるのか?というようなことは、簡単には分かりません。今後、簡易推定機能、そして、もう少し普通の定量推定方法を「複数」追加する予定ですが、まだ、時間がかかるかと思います。
時間がかかるのは、定量的なことをするには、「ソフト自体の問題」もありますが、それよりも「使う側の問題」が非常に根深い場合が多いので、使っているうちに定量的な測定の基本的な事柄や、やりがちな間違い、そして、その他の注意すべきことが自然と身に付いて来るような仕組みにしておかないと、初心者やその周囲や、ソフトのサポートをしている私も含めて莫大な時間の浪費になる可能性が高いと思うからです。
- テレミノMCAは、バックグラウンドを差し引いたBG差分のスペクトルを表示することが出来るので、微妙な汚染などの解釈がBG差分を出せないソフトよりもやりやすいです。はっきりしたピークが見える場合は、BG差分を見なくても分かることも多いですが、より正確な測定や、より微妙な汚染の測定には、BG差分表示は非常に役に立ちます。
今後、BG差分表示の時に、生スペクトルやBGのスペクトルを表示したり、それらの表示と非表示を切り替えられたり、使用するBGスペクトルを切り替えたり、記憶させてあるスペクトルをBG差分で表示させたり、スムージングなどのフィルターがかかっている場合には、BGにもフィルターをかけてBG差分を表示したり、より細かな設定の変更が可能になる予定です。これらのうちの幾つかは、既に「Browse」機能を利用して実現できますが、もっと簡単に切り替えられるようにする予定です。
- テレミノMCAには、スペクトルを記憶して表示する機能があり、BGを入れると現在は4つのスペクトルを記憶して表示できます。今後は、同時に表示できるスペクトルを10数個に拡張する予定です。
- テレミノMCAには、スペクトルや画面を一定間隔で自動的に記録する機能があります。この機能は、他のフリーソフトや、商用のソフトにも見たことがありませんが、測定の経過を観察したり、測定が何らかの理由で途中で中断した場合でも、それ以前のデータが保存されていたり、非常に役に立ちます。
また、記録をしたら自動的に新規測定を開始することも出来ますし、更には、スペクトルや画像データを保存したら、外部のソフトを立ち上げて実行するオプションもあるので、記録をGPSのデータと併せて保存したり、記録を自動的に変換したり、ウエッブサイトにアップロードしたり、色々な「応用」が可能です。
- テレミノMCAには、保存した(大量の)スペクトルを楽に参照できる機能があります。この際、自動的にアニメーションの様にスペクトルを表示したり、表示するスペクトルを指定のスペクトルと加算、減算したり、あるいは、一時間ごとに記録されている様なスペクトルを積算したり、更には、連続して読み込まれるスペクトルの前後の差分を表示したり、それらの結果を自動的に保存する機能があります。
これらの機能を使うと、自動的に一定間隔でスペクトルを保存して測定している場合などに、それぞれの時間ごとのスペクトルを表示したり保存したり出来るので、測定中に問題があった場合などでも、どの時点でどんな問題があったのか分かりやすくなるし、問題のあった時間分のデータを取り除いて、再度全部足し合わせたスペクトルを生成する、といったことも出来るので、測定データが全部無駄になる割合が減りますし、とても勉強になります。
また、原発周辺のモニタリングポストのデータを見る場合に、事故以前の通常のスペクトルを1日分くらい足し合わせてBGスペクトルを生成し、これと比較することで汚染の細かい変化などが非常に分かりやすくなります。
この様に、自動的に保存する「AutoSave」がスペクトルの「細やかな保存」を実現する一方で、そのデータを簡単に表示したり加工したり応用/解析する為の仕組みが「Browse」機能で、他のソフトには見られない非常に強力な機能です。
- テレミノMCAは、他の幾つかの測定器やソフトのスペクトルデータを読み込むことが出来ます。現在対応しているのは、多くの測定器やソフトが対応しているSPE形式の読み書き、テレミノMCA独自の方式、そして、IFKR−ZIPの読み込み。福島県が原発周辺に設置していた(横河製?キャンベラ製?)モニタリングポストなどの読み込みなども、まだ公開していませんが既に対応する作業は終わっています。
慣れたソフトでデータを見ると、感じられること、読み取れることの量や範囲が違っていたりしますし、別の測定器や、測定環境のデータを見ることは自分の使用する測定器や測定環境への理解を深めることになるので、今後も対応フォーマットを増やす予定です。
- テレミノMCAで「対数表示」とされているものは、実際には「指数表示」です。これは、イタリア本家の人たちが意図的にそうしたのか、勘違いしたのか、何なのか分かりませんが、将来的には、本当の「対数表示」も追加する予定ですが、現在の方式にも良い点があると思うので、こちらもそのまま使えるようにするつもりです。
- テレミノMCAには、分解能保障機能などのスペクトルの強調機能があり、「そのままでは分からないような微妙な違い」などを見分けやすくなっています。ただし、こういった機能を持っているソフトはほとんどなく、使い方を間違えると、自他の誤解を生みやすいので、ご利用には十分気をつけて頂きたいと思います。スムージングも含め、スペクトルの強調や操作や場合によっては不可欠と言っても良いほど強力で有効ですが、「基本は生スペクトル」ということで、「見やすい様に加工したスペクトルの世界」にあんまりのめりこみ過ぎない様にした方が良いように思います。
- テレミノMCAで、時々寄せられる要望は、徐々に対応しており、例えばスペクトル画面の色の変更が既に出来るようになっており、今後更に簡単に変更できるようになります。
同時に表示できるスペクトルの数も4つから10以上になりますし、それらのそれぞれの色や表示法や、スムージングや分解能保障機能などなどを細かく設定できるようになります。(現在は、この作業中)
また、スペクトルの表示を上下左右に移動させたり、高さの倍率を変えたり、最小、最大のエネルギーを変えたり、色々と出来るようになります。
現在の作業状況については、時々掲示板で報告していますので、ご覧ください。