どんなソフトウエアが欲しいか? ガンマ線スペクトル解析ソフトに求めること Theremino MCA To do
- どうして現在あるものとは別のソフトが欲しいか?と言うと、まずは、私は自分で好きな様にいじって改造したり、機能追加できる無料でオープンソースのソフトウエアが好きで、ガンマ線スペクトル解析ソフトにも幾つかオープンソースのものがありますが、それらの機能に満足していないからです。
- 不満な点を並べると、こんな感じです。
- 専門家向け、将来専門家になる学生向けのソフトが多く、色々な点で素人や初心者に優しくない為、普及や学習の障害となる。
- 抽象度の高い「数値」や「計算」が主で、見れば分かる「視覚情報/図形情報」の表示や入力に乏しい。理想的には、抽象的情報/操作法と、具象的なものの「両方」があると良い。GUIとコマンドラインやメニューショートカットが両方あると良いのと似たようなものです。あるいは、スライダーによる設定と数値による決め打ちが両方出来ると良い、というのと同じようなことです。
- 核種判定の支援をする為のピーク検出やスペクトルのスムージングに、FWHMや効率曲線を用いたり、それを利用者に分かり易く示すソフトが無いか少ない。
- フォトピークの分解能によるなまり方や、近接ピークとのダブり方、予想されるスペクトルなどを表示するソフトが無い。
- コンプトン散乱や、消滅、エスケープピーク、そして、コンプトンバレーの形状など、核種のエネルギー、測定器の性能や結晶の大きさなどによっても変わる想定スペクトル成分を分かり易く計算、表示したり、実際に測定されたスペクトルと比較する機能を持ったソフトが少ない。
- 素人が使いそうな測定器、自作測定機などの効率や分解能、遮蔽と吸収材やジオメトリーなどの推定をしたり、既知の情報を与えてそれを核種判別や定量推定の支援に使えるソフトがない。
- 想定される核種に対し、自動や半自動、そして手動との組み合わせて、複数の手法を使い、定量推定をしたり既知の試料による校正情報を容易に得られるソフトがない。
- 測定結果を画像データやスペクトルデータの形で容易に共有出来る仕組みのあるソフトがない。
- ユーザーが使用した機器の特性曲線を共有し、設定の簡略化や、推定作業の効率化、そして、測定精度を高めるような仕組みを持ったソフトがない。
- 核種情報データが視覚的にスペクトルなどの形で参照できる仕組みを内蔵しているソフトが少ない。
- 親の娘(たち)の平衡状態の判定などの情報を出せるソフトが少ない。
- 想定スペクトルや核種判定や簡易推量がなされた実測スペクトルから、半減期や追加量を考慮した将来のスペクトルを計算して表示する機能や、その後の実測値と比較する機能がない。
- 測定の自動化や定型作業を楽にする為のマクロ/スクリプトなどの仕組みが無いか少ない。
- 商用のソフトには、これらの幾つか、又は多くの部分が含まれるものもありますが、一般人には手の出ない価格のものが多いので、それらを参考にして、更に強化/簡易化したソフトを目指そう、というものです。
- もちろん、無料でオープンソースのソフトにこれらを要求するのが間違いだ、などと思う方もいらっしゃるでしょうが、無料でオープンソースのソフトには、こんな程度では納まらないとても複雑で高度で巨大なプログラムもありますし、有能な人が数人でやれば、1年もしないうちに出来るプロジェクトだと思います。今まで、この様なソフトがなかったのは、使いたい人の人口が少なく、一度詳しくなってしまうと、素人用の工夫とかが煩わしくなって、やる気がでない、など、色々な理由が考えられます。
- 残念ながら、私は「有能な人」に含まれませんので、私一人では、これらの実現は困難か、とても長い時間がかかる可能性が高いですが、既にこれらの「部品」となるようなソフトなどは、収集して、それらをぼちぼち勉強中です。集めた情報は、 Software Projects のページや、他の場所に、現在散らばっています。また、ちらほらと、こういうソフトに興味を持つ人も国内は海外に出てきているので、各自が出来る部分をやればよいだろうと思います。本当は、他に幾らでも優秀な人や適任者が居ると思うのですが、無償のオープンソースプロジェクトに時間をかける好き者/変わり者があんまり居ない様なので、仕方なく自分でやってみることにしました。
- 当面は、 Theremino Mca を基盤として、色々な機能を追加しようと思っていますが、もしかするとPythonか他の言語で別のものを作る可能性もあります。テレミノMCAは、完全に無償でオープンソースであり、サウンドカードスペクトル収得用のソフトで、自分たちで改造できるのは、現在これだけです。また、国際化の仕組みも一応入っていたり、日本だけでなく他の国の優秀な人に使ってもらったり、開発に参加して貰うのには、好都合です。ただ、使用している言語がMSのビジュアルベーシックの為、MSの開発環境をインストールする必要があり、無料とはいえオープンソース畑の人にはあまり好まれない可能性がありますし、また、LinuxやMacのようなUnix系のOSでは、Windowsのエミュレーション環境などを使って、ようやく走るという点でも不利です。そこで、将来的には、Pythonなど、他の環境でも走らせやすい、移植しやすい言語を使うことも考えているわけです。
- Pythonは、他人の書いたものでも、自分が以前書いて忘れてしまったものでも、大変読みやすい場合の多い言語で、オープンソースのソフトの寿命を考えた場合、重要な要素です。つまり、古いソフトでも、別の人が何年かして発掘し、新しい環境に合わせて部品を付け替えて発表する、というのが、容易になるからです。
実際にどんな機能を追加していくか?
- テレミノMCAには、現在に限られた各種判別支援機能しかありません。詳しくは、簡単な解説ページをご覧下さい。 Tomys Isotope Identifier Help Ja
- まずは、これを拡張して、 Identify Exe の様に、せめてフォトピークのみでも、想定されるスペクトルの形状を表示する機能が欲しいと思っています。これは、ヨウ素131の誤認の問題などでも分かるように、利用者のスペクトルに対する理解を深める非常に手っ取り早くて効果的な機能です。
例: Ra226とTh232(及びその娘)の計算上のスペクトル。 他の核種については、 Isotopes And Peaks をご覧下さい。
- 最初は、FWHMと効率は、手動で設定する単純な曲線でもって計算し、後で、実際の測定結果をFWHMや効率のデータに反映させる機能を追加すれば良いでしょう。
- 次に、コンプトン散乱のスペクトルの計算を加えます。これも、測定器の特性や結晶の大きさは、初期は手動の設定、後から実測地のフィードバックを入れればよいでしょう。これは、コンプトンエッヂの処理や、コンプトンバレーの推定も含めます。
- そして、アニヒレーションピーク、シングル、ダブルエスケープと、サムピーク、蛍光X線などを入れていきます。
- 単一核種について、大体実際のスペクトルと似たようなものが計算できるようになった時点で、実測値との比較による測定機特性の推察や、設定曲線の校正が出来ようになるとよいでしょう。
- こういうことが出来るようになると、計算上のバックグラウンドと実際のバックグラウンドを比べて校正し、その上にのっかる核種の判別や定量推定がより容易で正確に行えるようになるかと思います。つまり、ウラン系やトリウム系のせいでK40が底上げされていて定量がうまく出来ない、とか、Cs134にBi214が邪魔して、定量に問題がでる、とか、そういうことを減らせる可能性があります。
- また、測定器を自作したり、開発している人たちにとっては、自分の機器の特性曲線を見たり、他の機器と比べることもより容易に出来るようになるので、開発や調整がやりやすくなると思われます。
- これらの機能の一部は、既にオンラインで想定されるスペクトルを計算できる www.nucleonica.net で使うことが出来ますが、これは、無償のオープンソースというわけではないし、ネット環境がないと使えないので、困ります。これを部分的には簡略化し、他の部分では強化したもので、各自のマシンで(そしてスマホなどでも)走るものがほしいわけです。
http://www.nucleonica.com/wiki/index.php?title=Help%3AGamma_Spectrum_Generator%2B%2B
- また、Kek のEGS5やカナダのNRCのEGSNRCなど を利用しても同じようなことが出来るのでしょうが、その為には、設定とかが結構面倒だったり、フォートランでごにょごにょ書かないとならなかったり、素人には難易度が高いと思われます。また、エミュレーションで頑張るのも良いと思いますが、もっと手抜きの近似式で似たような結果を得る、怠け者向きの方法があるのではないか?その方が低性能マシンでも動いたりして良いのではないか?と、思うわけです。特に、素人機材や安価な測定器を主な対象とするソフトの場合、どんなに頑張ってCZTとか使ってみても、分解能が662KeVあたりで3%以下にはならないでしょうし、完璧に近い直線性も期待できないでしょうから、計算の方であんまり一生懸命に精度を求める必要があるかどうかわからない、というのもあります。
- おまけで付けたい3Dスペクトル機能。 セイコーさんの スペクトルナビゲイターのカタログから http://www.sii.co.jp/jp/segg/files/2013/03/file_PRODUCT_MASTER_1653_GRAPHIC02.pdf
3Dスペクトルについては、Gnuplotを使ってよいのであれば、実現できています。
例: Fukushima Disaster Spectrum3D 作り方の解説: Gnuplot Memo , Gnuplot Memo3D
連絡先: nkom AT pico.dreamhosters.com