Pb−214(鉛214)とI−131(ヨウ素131)の分離/分別 Separating Pb-214 and I-131
近接する各種がある場合、一般に分離は不可能か不可能なくらい難しいというのが常識的な考えかと思いますが、Pb−214とI−131の場合は、私の素人考えだと、分離、あるいは、少なくともどっちが多そうかくらいなら、分かるんじゃないだろうか?というのがこのページのお題目です。
まずは、Identify.exeで、Iー131のみ、そして、Pb−214のみの計算上のスペクトルを表示させてみます(フォトピークのみですが)。
ヨウ素131
鉛214
同じ鉛214ですが、分解能の悪い測定器だとピークがくっついて見えます。(横軸の倍率は上のものとは違います)
この様に、かなり違ったスペクトルになる筈なのがわかります。
これは、分解能が悪いアマチュア用1.5インチNaI(Tl)測定器を想定したもので、メーカーものの6%や7%の機械なら、さらに違いがはっきりするでしょう。
つまり、I−131の正確な定量が、Pb−214によって難しくなるのは、わかるけど、I−131のみ、Pb−214のみがある場合、これを見分けるのは十分可能かと思われるのです。
さらに、複数ピークのフィットを行ったりすれば(特にバックグラウンドのきちんとした測定もあったりすればなおさら)、これら二つが混ざっている場合でも、ある程度の定量的な分離だって出来るんじゃないだろうか?と。素人的には思えるのですが。
Peak Fit With R, Peak Fit With Octave, Peak Fit With Python
また、Pb214は、他のRa226の娘と一緒にいる場合が多いだろうと思うので、その情報も使用できるかも。
ウラン系 Ra226−>Rn222−> ... Bi214(609Kev, etc)、 Pb214(351KeV, etc) ...
参考にトリウム系も。 私のアパートのようにコンクリート製だったり、石膏ボードを使っていたりすると、遮蔽がない場合は、K40とともに、ウラン系とトリウム系が常に結構あります。(その上、雨や雪が降っても高層階のせいか、全然変わらない。むしろ雨天や曇天では、ガイガーカウンターの値は下がる、が、シンチレーターのスペクトル全体のカウントは、一部の領域が多少ざわついても、ほとんど変化無し。)
これらの有無や量が分かるかもしれないので、比較的高エネルギー領域(1.5MeV〜2.6MeV)にも目を向けると良いのではないか?と個人的かつ素人的には思う。
他の核種の計算上のピークも見てみたい方は、こちらをご覧下さい。 Isotopes And Peaks
子どもを放射能からまもる会in千葉@prochil_chibaさんのTwilog (Retweet)にあった石垣島の「放置プレイ」による問題の軽減/解消の方法。
http://ishigaki-lab.ciao.jp/ishigaki_labrepo01.pdf
こちらも、半減期を使う、というもの。
https://twitter.com/mw_mw_mw/status/361710725485432832
http://twilog.org/mw_mw_mw
Pb214が、それだけで存在するのではなく、Ra226とか、長寿命の親から出続けている場合は、逆にヨウ素なら、八日で半減するが、Pb214 (Ra226)はそのまま、といった結果になるのでしょう。
とにかく、みなさん判別は困難、ということで一致してますが。
http://memoli4future.com/kodomira/sokutei/entry-10420.html
http://www.city.nagareyama.chiba.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/010/814/idomizu-kensa-kekka.pdf
http://shimin-sokutei.blogspot.ca/2012/01/blog-post_6372.html
で、次のスペクトルなんですが、I−131が入っていないのはそうなのでしょうが、200KeV付近のピークって、本当にPb214なのかな? Pb212のような気もするんですが。
それに、352KeVのピークの大きさからして、この山がPb214にしては大きすぎるのでは?
http://blogs.yahoo.co.jp/belau_gt/14825217.html
ちなみに、Pb212の238KeVと、Pb214の242KeVは、(NaIやCsIにとっては)ほとんど同じ。Pb214だと、242KeVの小さい山と、295Kevの大きいもの、そしてI−131に近い352KeVの一番大きいものまで、三つが連なっている見える筈。
再度、Pb214。
下は、Pb212。
Pb214の三つの山がきちんと分かれている例がありました。Mineさんが2012年のクリスマスに降ったばかりの雪を測定したスペクトルです。これをヨウ素131と間違えるのか?と思うのですが。バックグラウンドの急斜面に乗るので、「一見」すると、三つの山が似たような高さにあるように見えます。Mineさんは、1インチNaIのAT1125でサーベイと自作遮蔽を利用した計測の両方を行っています。
http://pico.dreamhosters.com/HanahouokPartTwo.html
自分で測定したスペクトルにもPb214の三つの山がはっきり見える例がありました。これは、黄色っぽい色をした天然ウラン原石(Ebayで700百円くらい+送料だった筈。アメリカ産)を測定したもの。なんか、日本の雪って、ウランのスペクトルと良く似ている。。。。
「おのみち -測定依頼所-」さんの井戸水のスペクトル。これは、何日くらい放置すると減るのでしょうか?それとも親核種が十分あって、減らないのでしょうか?
https://twitter.com/LaboOnomichi/status/373069677506752512/photo/1/large
思ったこと
これから先、ヨウ素131が本当に検出されてしまう事態が再度起きてしまうことも、もしかしてもしかするとあり得るので、やっぱりこれも推定できた方が良さそう。
原発事故などでヨウ素131が検出される場合、恐らく他の核種も同時にあるのではないか?と思うので、それとひっくるめて測定すれば、間違える可能性が減るのではないでしょうか?
で、問題は、複数の核種と、それらのピークが複雑に混ざり合った状態で、どれだけ核種の判定と、NaIやCsI(特に分解能や直線性が理想的とは言えないアマチュアグレード測定機)でもって簡易定量がどの程度できるのか?という点。
素早い測定が必要とされるのは、非常に汚染の度合いが高くて、逃げる判断や安定ヨウ素を飲むかどうか、とか、屋内退避の対策の度合いを決断しないとならない場合。
この場合、おそらく、総合的に線量がかなり上がるので、ヨウ素を判別できなくても、問題ないかも。
次に、避難や緊急対策が一段落した後で、残留汚染の程度を推測して、その後の身の振り方を決める必要があるかと思いますが、その際も、多分セシウムとかを使えるので、ヨウ素131は、そんなに考えなくてもよいかも。
だとすると、「ヨウ素131だけ」の汚染が出るような事態(医療用線源の特大漏出、とか?)を除き、それほど考えなくてもよいような気もしてくる。
技術的には、セシウム134,137の判別や推定と、そんなに違うようには思えないので、対応しておけばそれに越したことはないのでしょう。
ついでに、原発事故の初期において、I−131と一緒に出るのはなんだろうか?ということで少し調べてみました。
- 結論から言うと、I−132や、K40の右側のトリウム系かウラン系の桁違いの増加を見張っていた方が、I−131に注目するよりもわかりやすそう。同じような壊れ方をしたら、の話ですが。
以下は、2011年の3月13日18時30分の大野局のモニタリングポストのスペクトルの画像データをコピペして、グラフスキャナーでcsvデータに変換、一行目(Y軸データ)を削除して、いい加減なSPEファイル形式ヘッダーとフッターを付け加えて、Identify.exeで、合いそうな核種のマーカーを付けてみたものです。(間違っている可能性大有り、一部、I−132のピークの高さが計算で予想されるものと合ってないし。他の核種の影響かもしれないですが) 画像データからスペクトルデータを再現するやり方は、 Software Projects の下の方に書いてあります。
230KeV付近のピークがPb212なのかTe132なのか、私にはわかりません。他のものかもしれないし。もし、テルルだとすると、3月11日の夜22時50分の時点で既にちらっと出ているかも。もしかしてXe133?訂正です。大野局で230KeV付近のピークが最初に出たのは、3月12日の朝8時ころでした。Youtubeの三つのモニタリングポストを一緒にした動画で、大野局のデータに時間のずれがあるようです。PDFデータと比べていて発見しました。
元データにしたのは、このPDF: http://www.pref.fukushima.jp/nuclear/info/pdf_files/120207/NaISec_Oono_20110311-20110316.pdf
他に夫沢 http://www.pref.fukushima.jp/nuclear/info/pdf_files/120314/NaISpec_Ottozawa_2011031100-2011031506.pdf 最初の兆候は12日四時五十分
郡山 http://www.pref.fukushima.jp/nuclear/info/pdf_files/120314/NaISpec_Koriyama_2011031100-2011031423.pdf 最初の兆候は12日四時半
富岡 http://www.pref.fukushima.jp/nuclear/info/pdf_files/120314/NaISpec_Tomioka_2011031117-2011031323%281hr%29.pdf 最初の兆候は12日朝八時
繁岡 http://www.pref.fukushima.jp/nuclear/info/pdf_files/120314/NaISpec_Sigeoka_2011031117-2011031423%281hr%29.pdf ここは、よく見えない。
他のモニタリングポストでとても明らかな異変があるのは、3月12日の朝4時30分頃から、双葉町でトリウム系なのかウラン系かK40の右にどっと出て、カウント数が全体的に一桁増えている。そして、この時も同じ位置に山が出てますが、トリウム系だとPb212があってもおかしくないでしょうから、やはりTe132なのかどうかはわかりません。ただ、その十分後には、大野局でも、再度 Te132又はPb212の山が出ているし、その後はもう色々出たり減ったりカオスです。で、I−132とかが、良く見える形で出てくるのは、3月12日の朝7時くらいから。
まとめがあった http://www.pref.fukushima.jp/nuclear/info/pdf_files/120314/1.pdf
去年、ちらっと見た記憶がありますし、汚染スペクトルの例に、これのコピーを使ってるくらいですが、あんまり詳しく見ていなかった。
Youtubeにあった動画をダウンロードして、コマ送りにして見てみたら、面白かったです。
http://www.youtube.com/watch?v=QYfg7aDykgM <==ただし、この動画の青色のデータ(大野局)は、時間がずれている部分があるので要注意。
http://www.youtube.com/watch?v=0-2R7jHyBjw
これらのモニタリングポストをしっかり監視していたなら、3月12日の早朝の時点で、その近辺の人たちは、逃げるか閉じこもるかした方が良いかもしれない、という兆候があったのではないか?と、素人的には思います。やはり、国とか自治体と平行して、自分でもスペクトルモニタリングをして、アラーム機能でも仕掛けておいた方が良いのかもしれない。
しかし、素人がこういうことをやり始めると、時間がかかるので、本当はどこかのまともな学者さんが、元のスペクトルデータを使い、精密な分析をして発表してくれると勉強になるんですが。既にだれかやっていて発表されてたら、教えてください。
連絡先: nkom あっと pico.dreamhosters.com
http://nsed.jaea.go.jp/ers/environment/envs/FukushimaWS/jaea1.pdf
http://www.cpdnp.jp/pdf/110427Takasaki_report_Apr23.pdf
http://www.meti.go.jp/press/2011/10/20111020001/20111020001.pdf
東電はスペクトル取ってなかったのか?あるいは、発表してない(隠している)だけ?
先日、雨に伴い各地で線量が上昇して、「話題」になっていましたが、全国にスペクトルモニタリングポストを設置するのは「とっても簡単で大した金額ではない」のにやらないのは何故?
HPGEのようにきっちり核種が見えなくても、「ある波長領域の明るさの変化」がわかるだけのGM管や小型シンチレーターによるカウントだけでなく、「もっと広範囲の明るさと色合いの変化」がわかって良いと思いますが。
例えば、感度確保に3インチくらいのNaIかCsIを使い、KromekのCZTを使ったGR−1かTechno−APのTA100やAmpteckのCdTeみたいなものも併設してより分解能の高い識別と高濃度汚染にも対応できるようにして、複数のサーバーにデータを流して処理、保存する、とか、技術的には、「直ぐに出来る」し、金額的にも日本の企業や代理店にぼられたとしても一箇所2百万円かそこらで出来るんじゃないのでしょうか?
復興予算をとんでもない事に使うなら、こんなの幾らでも出来そうですが。
そうは言っても、お役所や企業がやるかどうか、やっていてもデータを出すかどうかわからないので、有志が勝手にやった方が早いし、アルマジロの1インチ版とか使えば一箇所十万円以下で出来てしまうので、スペクトルサーベイと平行してみんなでやれないものでしょうか?
ベクモニで、簡易定量推定が出来るし、 Theremino Mca の実験版で、任意の間隔でスペクトルのデータや画像を保存しまくる機能もありますし、更にこれら二つを平行して利用することもできます。
これらのデータを数箇所のサーバーにぽちぽち送って、見たい人が見たい場所の希望の時間のデータをダウンロードして使えるようにするのも、とっても簡単。
もっと言ったら、お役所や測定所の発表も、数値だけでなくて、スペクトルの画像や、特に生データも一緒に出せば、間違いがあったとしても他の人が発見してくれるでしょうし、多くのデータに触れることで沢山の人が色々と学習できると思います。
ちなみに私は、1.5インチNaI測定機を使ったスペクトルモニタリングを始めました。
長期加算、1800秒の移動平均、そして、20秒の移動平均、そして、総カウント数の10秒の移動平均を見て、同じくモニターしているガイガーカウンターや、時々線量の増減によるアラームが鳴るPM1703と比較しています。
雨が降ったりすると、確かにウラン系のあたりの活動が活発になるようにも見えますが、スペクトルが滑らかになる頃には山として見えるほどにはなりません。
もっと感度の良い、2.5インチCsIの方を投入したり、部屋をわざと換気したり工夫しないと、降雨時の微妙な変化を目に見える程検出するのは難しいかも。
- 現在は、2.5インチCsIでスペクトルモニタリングをしています。
http://pico.dreamhosters.com/BackgroundRadiationOfMyHome.html
- 福島県から今までに発表された原発周辺のモニタリングポストのスペクトルを3D化しました。
http://pico.dreamhosters.com/FukushimaDisasterSpectrum3D.html