- このページに書いてあることが良く分からない場合は、スペクトル早分かり Quick And Easy 、 Spectrum Formation や Giza Giza をご覧頂きますと、分かりやすいかと思います。
- このページに書いてあることは、私のサイトの他のページ同様、「素人測定」をしている私の意見であって、専門家や経験豊富な方の「お墨付き」があったり、お役所や学者さんなどに認められた事柄でもありませんが、こういうことに関しては、かなりしつこく慎重に検討する癖のある私が自分や他の人の経験や知識を元にして考えているものです。
目視によるピークの判定法 Visual Peak detection
ピークが有るかどうかを見分けるには、色々なコツがあります。
背景の放射線に邪魔になるものが少なくて、十分な高さのピークを出すほどの線量を含む検体で、スペクトルが滑らかになるか、ギザギザが
十分細かくなるまでの時間我慢して測定すれば、特に工夫をしなくても釣鐘型の教科書どおりのピークや、更にはコンプトン散乱や
バックスキャッターピークまで見えてくることもあるでしょう。これは、もう、誰が見ても文句の付けようがありません。
しかし、背景に邪魔者が居たり、十分な線量を含んでいない検体の場合は、たとえ十分な時間測定しても、
- 背景放射線(バックグラウンド)を差し引いたスペクトルを見るか、
- 鉛の遮蔽の中に入れて測るか、
- 検体を濃縮したり(乾燥、灰化)して測定器の近くに放射能を出す物質が密着するようにしないと、
山が見えない、或いは、不確かな場合、その娘核種や親核種から攻めたり、エネルギーの高い方や低い方などの別のピークを使おうとしてみたり、コンプトン散乱の成分を利用しようとしたり、ベータ線を利用したり、色々な工夫の仕方がありますが、最初のうちは、あんまり考えなくてもよいかもしれません。
また、そういう工夫をしないとならない場合は、「趣味」や「チャレンジ」としては面白いですが、日常的で簡便な「素人測定」の範疇を超えているのかもしれません。
更に微妙な汚染などは、たとえ鉛の遮蔽の中で測定し、BG(背景放射線=バックグラウンド)を差し引いたスペクトルを見て、そして灰化などの濃縮をしても
良く見えて来ないかもしれません。
これらの全てをやっても見えてこない場合、それが、その測定環境の能力の限界と言う事になります。
また、例えば、灰化は時間的にも無理だったり、あるいは、まだ測定に慣れてなくて、工夫の仕方が分からない場合、その段階が、「現状での限界」と言うことになります。
この様な測定環境の能力の限界に近い検体を測定する場合、ピークかどうか?は、慎重に行わないと間違いやすくなります。
BG(バックグラウンド、背景のスペクトル)を差し引いたスペクトルを見られない機械やソフトを使っている場合、データを加工してBGとの差分スペクトルを作ってみると良いでしょう。方法としては、色々ありますが、エクセルなどで読み込める形式でデータを書き出し、BGと検体のスペクトルを読み込んで、その差分スペクトルを作り、そのままエクセルとかで表示させたり、スペクトル分析用のソフトに再度読み込ませたりすると良いかもしれません。
- まず、基本的に、BG(背景)を差し引いたスペクトルを見る場合、チャンネルピッチを荒くしていない限り、ギザギザが草むら状になっている筈です。
- このギザギザの草むらから、
- その測定器で普通に見られる十分な幅で、綺麗な釣鐘状に持ち上がって、その下が完全に抜けているなら、文句無しのピーク。この様なピークの場合、背景のスペクトルよりも、BGを差し引く前のスペクトルが、その部分で少し高くなっているのが目視できる場合がほとんどです。定量もピークフィットとかやりやすいし、信頼性が高くなるでしょう。
例: 薄緑が検体(測定器から離して置いたCs137線源)のスペクトル。水色がBG。緑がBGを差し引いたスペクトルで、草むらと、綺麗に持ち上がってその下が白く抜けているCs137のピークが見えます。
- 形は、綺麗な釣鐘状でないが、その測定器で普通に見られる十分な幅でギザギザの平均的な上面より持ち上がって、その下の部分が完全に抜けているなら、ほぼ確実にピーク。BGよりも、検体のスペクトルの方が、少し持ち上がっているのがズームとかすれば見えるかも。まだまだ、定量的にも信頼性があるかも。市民測定所などでは、効率よく測定を進める必要があることから、この段階のスペクトルが多いかもしれません。
- ギザギザの平均的な表面よりあんまり持ち上がってないけど、その測定器で普通に見られる十分な幅で持ち上がっていて、その下が完全に抜けているなら、多分ピーク。定量的には、難しくなってくるかも。とても慎重な人なら、既にクロスチェックを考えたり、もっと工夫しようと思い始めるレベル。
- ギザギザの平均的な表面より持ち上がってないし、その下も完全には抜けていないが、その測定器で普通に見られる十分な幅で持ち上がっているなら、もしかしたらピーク。これくらいだと、BGと検体のスペクトルは、その部分でほとんど重なっていて、特に、ギザギザが収まっていないと差がほとんど分からない程度。ソフトによっては定量はあんまり信用できないかも。
- ギザギザの表面より持ち上がってないし、その下もあんまり抜けていないし、幅も十分でないなら、ピークかどうか疑わしい。定量推定は、参考値程度かそれ以下か。
- ギザギザの表面より持ち上がってないし、その下もあんまり抜けていないし、草むらのギザギザが集まって見える程度だと、ピークじゃない可能性が高まります。定量は多分無理でしょう。
- ギザギザの周囲の草むらと区別がつかないなら、その時点ではピークとは言えないでしょう。ただし、非常に早い段階ではこう見えても、時間をかけるとピークに成長する場合は、あったりします。時間をかけてもそのままなら、定量は多分ND確定。
なお、不確かである、NDである、というのは、「汚染が無いこと」の証明ではありません。単に、汚染があったとしても、その測定器ではもっと工夫をしないと見えてこないレベル、ということです。
ただ、2インチ以上の結晶の有る測定器で、5センチくらいかそれ以上の遮蔽を使い、温度や周囲の汚染などの測定環境などにも気を使って、十分長時間(1日、2日、など)測って、それでも何にも見えない場合は、もう「素人測定」の範囲を超えてしまっている、と思って良いでしょう。
今後、安価なCZTやCdTe、あるいはLaBrや他の分解能や感度が優れた測定器が入手できるようになれば、素人測定でもさらに微量の汚染を調べられるようになる可能性はありますが、残念ながらいつのことになるのやら見当もつきません。
定量推定をしてしまうソフト、測定器では、ピークが明らかに見えない場合でも、数値を出してしまう場合があったりします。初心者の場合は、ソフトや機械の扱いに慣れていなくてピークが見えていないだけの場合もあるので、機械が出す数値を元にして考えていても良いでしょうが、慣れてきたら「もっと自分でもしっかり考えましょう」。
また、次のような場合には、注意が必要です。
- ギザギザの草むらがやけにまばらな場合、BG(背景)のスペクトルを取ったときよりも、検体のスペクトルの方が下になっているのかも。背景の放射線が減少したり、測定器の感度が落ちるような現象があったのかもしれません。「一部だけ」、草むらが刈り取られている場合、そこがBGよりも凹んでいる、ということですので、全体的なズレがあったり、測定器の周囲の放射性物質の配置に変化があったのか、環境中の放射線に変化があったのか、遮蔽に変化があったのか、調査や確認をしてみると良いでしょう。
- ギザギザの中にピークのようなものがあるが、その幅が普通のピークの半分くらいで、しかもその形が釣鐘状の半分だけみたいになっていて、絶壁の側に同じ様な幅で草むらが刈り取られた状態になっている部分がある場合、それは横軸のエネルギー校正か、あるいは直線性がズレていて、「ピークが割れている」ものです。
- BGとの差分スペクトルを見なくても、ピークの存在がわかるのであれば、別に問題ないですが、微妙な場合は、校正を調整したり、あるいは、BGを取り直すとかしないと、結果は信頼できません。
- ギザギザの草むらが、興味の有る部分を含めて絨毯状に持ち上がっている。この場合は、もっと右の方(エネルギーの高い方)にあるピークのせいで、コンプトン散乱がある場合や、強力なベータで絨毯状(正確には、だらーっとした釣鐘状の一部なのでしょう)に持ち上がっている場合などがありそうですが、そのギザギザの平均的な位置を基準に考えれば良いので、ピークの存在だけを見るならば別に問題ないです。
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Maple Syrup Spectrums メープルシロップの測定におけるスペクトル形成の例がありますので、ご覧ください。
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