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スペクトル早分かり Quick & (ch)Easy

放射線に関することは、クソ面倒なことが沢山あって、全てを最初から頭で把握して取り掛かろうとするととても大変です。

それよりも、スペクトル学習に於いては:

  1. まず、スペクトルを見てみる。
  2. そして、自分でも測定器を持っているなら、スペクトルを取ってみる、
  3. 「少し」見ただけ、取っただけでは、わかってこないので、沢山、繰り返し見てみる。
  4. 短時間スペクトルを取っただけではわかってこないので、長時間測定「も」何度もしてみる。
  5. わからないことがあったら、自分で悩むのも楽しいですが、忙しい人は、周囲の(本当に)詳しい人に尋ねたり、掲示板などで質問してみると楽。
  6. プロや素人の沢山のスペクトルを(本当に)見慣れている人なら、問題のあるスペクトルやその設定を見ると色々なことがわかるので、設定の間違いや解釈の仕方の勘違いや好みの違い、気を付けたほうがよさそうな事柄が的確に指摘できる場合もあります。
  7. ネットには、非常に多くの文献もあり、参考になるものも沢山あります。ただし、「素人測定」には、強いて必要のない情報、気にしなくて良い事柄、難しすぎる事、などもあるので、なんでもかんでも全部分かってないと駄目なのだ、と、思わないほうが良いです。
  8. 逆に、とっても基本的なことで、避けて通れない事柄(横軸の調整など)もあります。このページ出てくる事は、慣れ親しんで、理解すると楽になります。
  9. どんな参考書などでもそうなのですが、一度読んだだけでは、体に沁み込んで来ないので、読んで分かったつもりになったら、スペクトルを幾つも見ながら確認し、しばらくしたら、また読んでみると良いでしょう。
  10. とにかく、「習うより慣れろ」ということで、スペクトルを沢山見て、色々疑問に思って、考えたり悩んだりしながら確認すると良いでしょう。
  11. 最初から微妙な汚染を測定しようとすると、混乱しがちです。まずは、分かりやすい、簡単なものから測って、慣れる様にしましょう。
  12. 手始めに、典型的な遮蔽の外での背景や遮蔽の中での背景、そしてセシウム汚染のスペクトルを見慣れると良いでしょう。
  13. これらは、環境と機種と表示方法で大きく印象も中身も異なっていることがあります。まずは、自分の使っている機種から始めると、初期的な混乱が減るでしょう。
  14. 予想と異なる結果、自分の希望と異なる結果が出た場合に、それを無理やり捻じ曲げて解釈しようとしてしまう衝動が強い場合は、仕方がないので間違いや失敗を繰り返しながら「自分の測定」に対する「厳しい検討の繰り返しなどに裏打ちされた信頼」を持てるようになると良いでしょう。


まだ説明が分かりやすくなってなかったり、図が付いてない場合などもありますが、整備計画中です。

放射線の一つであるガンマ線は、光の波長が紫外線よりも短くて、エネルギーも大きいものです。

プリズムで太陽の光が虹のように分かれるように、ガンマ線も検出器をつかって波長の違いで分けることが出来ます。

分けたガンマ線について、波長(エネルギー)を横軸、波長別に検出された回数(又は、毎秒の回数、cps)を縦軸にして
並べたのが、ガンマ線スペクトルとか呼ばれているものです。


ピーク(山) Peaks

放射線を出す元素(放射性同位元素)の中には、ガンマ線を出すものがあり、核種ごとに特定の波長(エネルギー)のガンマ線を出すので、
ガンマ線スペクトルのピーク(山)を見ることで、どの核種があるのか(定性)、どれくらいあるのか(定量)知ることができる場合があります。

一つの核種で、二つ以上のピークが出るものもあります。

また、ガンマ線を出さない核種でも、他の放射能を出して崩壊した後の娘核種がガンマ線を出し、それを使って検出できる場合があります。

慣れてきたら、ピークとピークが重なり合ったサムピークと呼ばれるものが出ることがあるのも覚えておくと良いでしょう。
例えば、Cs134のサムピークが、K40の山に混ざって、山が左にズレているかのように見える場合があります。(Cs134が沢山ある場合)


コンプトン散乱と後方散乱(バックスキャッター) Compton scattering and back scatter

ピークがあると、その左に、コンプトン散乱と呼ばれるものがおまけで付いてきます。

従って、複数の核種のスペクトルが混ざっている場合、それぞれのピークと、そして、それらのピークのコンプトン散乱を合わせたものが見えることになります。

コンプトン散乱は、ピークに左の少し離れたところから始まります。このコンプトン散乱の端をコンプトンエッジと呼びます。
それからさらに左へ、少し凹んだ形の丘がだらーっと続きます。

また、遮蔽の中で図っている場合など、放射線を出す試料の後ろ何かがあると、これにぶつかった放射線が跳ね返って結晶に入って検出されることがあり、これを後方散乱(バックスキャッター)と呼びます。

このバックスキャッターピークも、コンプトン散乱の上に乗っかります。

ピークとセットメニューになっているコンプトン散乱とバックスキャッターの出方は、そんなに難しくないですから、早く慣れてしまうと良いでしょう。

セシウム137のピーク、コンプトン散乱とバックスキャッター (そして、娘核種のピーク)の例

この他、測定器の性能などによっては、シングルとダブルのエスケープピークなどなども見える場合がありますが、最初は気にしなくて良いでしょう。

詳しくは、コンプトン散乱についてのページ や、たろうまるさんの解説ページをご覧下さい。


スペクトルの違い Different types of spectrum

ガンマ線のスペクトルは、使用する検出器などで、(主に「分解能」と呼ばれる特徴の差によって)その様子が違います。
分解能が高いほど、細かい波長(エネルギー)の違いを見分けられることになります。


ゲルマニウム、NaI(Tl), LaBr のスペクトルの比較 (ウラン原石) Comparison of spectrum taken by HPGe, Labr, and NaI (U-Ore)

  http://www.jasonsadowski.ca/Uranium-Ore-Analysis.php

一番上の黒い線が、NaIの検出器によるもの。まだ、あんまり滑らかになってなくて、細かなギザギザが残ってます。

上から二番目の赤い線がLaBr。一番下の緑の線がゲルマニウム検出器です。

単に、見え方の違いの例ですから、「覚えよう」とかしないで、単に眺めて、「へぇー、色々違うんだ」とか思ってるだけで十分です。

  

  詳しくは、 シンチレーター結晶や半導体結晶の種類とそのスペクトル に色々な例がありますので、ご覧ください。


「校正」(横軸の調整) Calibration

ガンマ線スペクトルを測定する時、あるいは、測定したデータを調べる時、スペクトルのエネルギー位置が表示されるエネルギーの目盛りと合っていない場合があります。
この様な場合には、ソフトや機械の説明書などを見て、校正(横軸の調整)をする必要があります。

ちなみに、「校正」という言葉は、色々な意味で使われていて、ここでは、単に「横軸のエネルギー位置を合わせる」ということを指しています。


様々な表示方法 Display methods

スペクトルの表示方法には、使用する機械やソフトにもよりますが、リニア表示と対数表示があり、縦軸だけでなく、横軸についても対数表示ができたり、対数表示の割合を変えることができる場合もあります。

また、縦軸(カウント数や毎秒のカウント数)や横軸(エネルギー、又はチャンネル)のズームや表示範囲の選択などができる場合もあります。

加えて、特に測定を開始して時間があまり経ってない時などは、スペクトルがギザギザで、その傾向がわかりにくいために、平滑化(スムージング)を施して、擬似的に滑らかにしてから観察したり、各種の計算に利用したりすることも良くあることです。

これらの表示方法の違いにより、同じスペクトルでも、とても違った印象を受ける場合があります。
また、ズームしたり、対数表示にしたり、強調したりしないと「全く見えてこない」様な事柄もあります
従って、スペクトルを見る時は、検出器による違いの他にも、どのような表示方法によるスペクトルなのか?という点も考えながら眺めた方が良いです。
そして、自分でも、様々な表示方法を試して、どのような場合に、どんな方法で表示すると、目的とする事柄がわかりやすいのか?というのを覚えると良いでしょう。

たとえて言うなら、カメラのズームや魚眼レンズやフィルターなどの使い方を覚えるようなものです。


慣れておくと良い核種 Isotopes you want to get used to

良く見る核種については、どんなピークが見えるのか、慣れておくと良いでしょう。

Cs137, Cs134, K40, Bi214, Pb214, Tl208, Ac228, Be7 (それと、十分な遮蔽の中では511KeVの消滅ピークも見えます。)

上記以外の核種は、(Bi212など、トリウム系やウラン系のものを除き)なかなかお目にかかれません。もし、見えたと思ったら、よくよく検討しましょう。

   
上記の核種で、Cs134とCs137以外は、「自然核種」と呼ばれていて、善良な人は「原発や原爆や加速器などなど」から生成されているかもしれない可能性を想像さえしない決まりになっている「思考停止用核種」で、土の中、海の水、空気中などに存在していて、背景の放射線(バックグラウンド、BG,BKG)としてスペクトルに混じって来たりします。ただ、個人的には、原子炉の中や加速器などでもBe7やウラン系やトリウム系も出たりするので、「自然核種(NORM)」と呼ばれるものが、核汚染物質に由来する可能性なども忘れないようにした方が良いのではないかと思います。

もちろん、他にもあるのですが、まずはこれらのピークの出方を実際のスペクトルを色々な表示方法で沢山見て慣れることをお勧めします。

例:

うちの(遮蔽の外の)背景放射線。  3インチのNaI(Tl)の検出器をFUIジャパン製デジタルMCA−1301に繋げてベクモニで測定。

うちは、やさしおがなくてもK40の1460KeVが良く見えますし、トリウムランタンマントルがなくてもトリウム系のTl208の2614KeVが良く見えまし、ウラン原石が無くてもウラン系のBi214の609KeVが見えます。これは、結晶が大きい測定器なので、結構早くそういうのが見えてきますが、結晶が4ccのCsIの測定器でも、時間をかけると同じようなスペクトルが見えます。また、分解能などにもよりますが、Pb214の三つの山もほのかに見えたりします。これらは、床や柱のコンクリートとか、台所やバスルームのタイルのものを拾っているだろうと思います。

ただし、まあまあ強いテスト用線源があると、特に小さな結晶の測定器を使っている場合、横軸の調整が素早く、かつ明確にやりやすくなります。


同じ測定器の同じ背景(BG)のスペクトルで、テレミノMCAで測定。横軸だけ対数表示。少し、Bi214やPb214は左にズレています。


横も縦も対数(Log)表示。エネルギーの低い左の方が拡大されているので、Pb214のズレが分かりやすい。


横も縦もリニア表示(XLog、YLogボタンを切って対数表示をなくしました)。こうすると、Tl208の高い方はよくわからない。


セシウムやカリウムの領域をズームスライダーで拡大+平滑化(スムージング) 

うちは、汚染してない筈なので、セシウムは見えませんが。 Bi214の609KeVは、Cs134の605KeVと近いので、NaIやCsIでは判別不可能です。

Cs134のように、複数のピークがある核種では、他のピークの存在と、それらの複数のピークの「分岐率」に見合った高さの出方でも判断できます。


トリウム系とウラン系の見分け方 スペクトルに慣れてきたら、こういうのも知っておくと便利です。

緑=トリウム系(Pb212,Ac228,Tl208,Bi212、など)。  水色=ウラン系(Pb214,Bi214、など)。 灰色=BG

ベクモニで同じ様にウラン系(灰色)、トリウム系(水色)、そして汚染土壌(紫)を測ってみた例。


Spectrum Examples のページにも色々あるので、ご覧下さい。
Isotopes And Peaks のページにも(バックグラウンドやコンプトン散乱などがない状態の)複数のピークの「分岐率」に見合った高さの見え方を並べてあるので、ご覧下さい。


とにかく、(解説のついた)スペクトルを沢山見て慣れることが、早道です。
Lab Links のリンク先などを何度も見て慣れましょう。

また、日本語インデックスに入れてある他のページも参照すると良いでしょう。

特に、スペクトル形成 Spectrum Formation とギザギザ Giza Giza は、色々な勘違いを避ける為にも是非ご覧下さい。



最新の情報は、随時 掲示板 に書いてありますので、ご覧ください。
  http://pico.dreamhosters.com/picobbs/index.html


Last modified : Tue May 5 12:13:31 2015 Maintained by nkom AT pico.dreamhosters.com