- このページに書いてあることが良く分からない場合は、スペクトル早分かり Quick And Easy をご覧頂きますと、分かりやすいかと思います。
スペクトル形成の過程 Spectrum Formation
スペクトル測定を始めた方、既に経験豊富な方なら、スペクトルの出だしと、スペクトルが十分形成されて
滑らかになった時の様子に違いがあることは、ご存知でしょう。
例:セシウム137を20Bq含む土を8cmの厚さの遮蔽の中で測定した場合のビデオ。(Csl2.5インチ測定器)
スペクトル形成の初期の様子と、かなり落ち着いて丸くなってきた状態との比較などがご覧頂けます。
http://pico.dreamhosters.com/img/V60/ThereminoMCA-Soil-20g_2014_03_20.avi
チャンネルピッチの設定などによって、差はありますが、測定の出だしは、
スペクトルには大きなギザギザやヒゲ、谷や割れ目があり、鋭角的で尖っています。
それが、時間と伴に徐々に落ち着いて、段々まろやかになり、そして、滑らかになって行きます。
「スペクトル測定を始めた人の多くが辿る道」として、このスペクトルの出だしのギザギザやヒゲを
ピークだと思ってしまったり、尖っている山を見て分解能が素晴らしいと喜んだりする、というものが知られており、
これは、まあ、誰しも多かれ少なかれ経験したり、あるいは、事前にそういう勘違いがあることを
知っていても、やっぱり、ヒゲに山を見出したりしてしまうものなのかもしれません。
しかし、傍目には微笑ましく、「私も通った道なのだ」とか思っている人も多いかもしれないし、
かなりの人がやってしまう勘違いだからと言って、誰もが経験しなければならない様な必要悪でもないと思いますので、
こちらで例を挙げて説明して、さっさと通過したり、そこにハマらずに先へ進んだりして頂ければと思います。
この現象が起きるには、スペクトル測定を始める人の多くに、「過剰な期待」があるからだと考えられます。
特に、素人測定を始めよう、などと考える人の場合、測定をすることで何か分かる、判断できる、と思うからこそ
始めるのであって、全く期待もなく測定をする人は非常に少ないと思います。
そして、測定をする、ということは、何かを見つけるということで、それぞれの核種にピークがある、などの
予備知識はあったりするので、どうしても人情として、ピークを探してしまいます。
更には、ピークとピークが分かれていて「分解能の高い測定機が良い」というような情報に触れたりしていれば、
自分が使っている測定機でも、ピークが分かれていればいいな、と期待するのも、極自然なことです。
そこに持ってきて、スペクトルの出だしは、ギザギザでヒゲも出たりするので、相当に冷淡な人でもなければ、
「あ、ピークが沢山ある!」「凄い分解能だ!」、そして、「(自分が使っている、買った)この機械は素晴らしい!」と
勘違いして喜んでしまうのも、自然の成り行きだと思うのです。
その上、何事に於いても、「初期の肯定的体験」というものは、とても印象的だったりしますので、
一度「この機械は凄い!」と感動してしまうと、実は、それが勘違いだった、ぬか喜びであった、という現実を
認めたくなくて、時には頑なになったり、そんな必要もないのに言い訳を探してしまったり、恥ずかしく
思ってしまったり、良くある、愛と成長のドラマになってしまうのです。
なので、そういう経験もまた、面白面痒くもあり、青春の一コマとして良い思い出になってくれれば良いのですが、
たまには、単に恥をかいたというトラウマや逆恨みになってしまったり、弊害も少しはあるので、
出来たら避けて通ったり、あるいは、さっさと個人的に通過する(私の場合は、これ)と、本来の目的に
近づきやすいかと思われます。
まず、最初の例は、NaI(Tl)=ヨウ化ナトリウムのタリウム漬けで、直径40mm、長さ40mmの結晶を持つ測定機で、約8cmの
厚さの鉛の遮蔽内で、空のマリネリを測っている時のスペクトル画像と、スペクトルデータです。
遮蔽の中なので、ご覧の様に毎秒当たりの総カウント数も少なく、既に46分経過していても合計で5000カウント強しかありません。
セシウム137の662KeV付近のエネルギー位置では、カウント数がたったの32です。
そんなわけで、スペクトルもまだギザギザの大揺れで、目だったヒゲこそありませんが、この状態ではK40がほんのり分かる以外
「どこかにピークがある」とは、(少なくとも、私には)「到底言えない状態」です。
しかし、Cs137の位置には、ギザギザの頂点が合致してますし、Cs134の795KeV付近にもギザギザの頂点がありますし、
600KeVの近くにもあるので、「過度の期待」に影響されれば、「セシウム三兄弟が見えた」と思ってしまう可能性もあるでしょうし、
「凄い!この測定機は、こんな少ないカウント数でも汚染を見分けられるのだ!」などと喜んでしまうかもしれません。
http://pico.dreamhosters.com/img/V60/2013_10_28_20_49_56-Empty-M_in_LC2-NaI-40mm_x_40mm.txt
これが、合計で2時間経過した時のスペクトルです。
ギザギザが少し落ち着いてきて、K40と511KeVは、遮蔽の中の様子を知っているのもあり、山があるのは、分かる。
それ以外は、まだ、はっきりしない、という状態です。
でも、最初のスペクトルでもって、もしも「セシウムが見えた」という印象が強く、先入観として残ってしまったら、
こうなっても、いやいや、まだセシウムの位置に小山が見える!と、思ってしまうかもしれません。
http://pico.dreamhosters.com/img/V60/2013_10_28_22_11_03-Empty-M_in_LC2-NaI-40mm_x_40mm.txt
で、約60時間後に、こうなりました。
もしかしたら、セシウムの存在を既に確信してしまった場合は、Cs137の位置の小さな出っ張りを「存在の証明」だと思うかもしれませんが、
私には、Cs137は「無いか、有ってもこの測定機では分からないくらいの微量」に思えます。
ほぼ何も無い、511KeV以外は、K40のコンプトン散乱の上のヘコミが見える、ツルペタ状態なんじゃないかと思えるのです。
これだけ放置しても、まだ、ギザギザが残っていて、「とても滑らか」とは言えませんが、毎秒の総カウント数が1.8cpsで、
ガイガーカウンターに毛の生えた程度ですし、この測定機はNaIで、CsIに比べれば多少温度変化に敏感で、
しかも磁気遮蔽を施していないので、地磁気の変化などにより、ばらつきや揺らぎもあるみたいで、
多分、もっと長く放置しても、スベスベのツルツルには、ならない様な気がします。
でも、Cs137の位置で、カウント数も1000を超えてますし、大まかな傾向としては、こんな感じで間違いないでしょう。
http://pico.dreamhosters.com/img/V60/2013_10_31_08_19_14-Empty-M_in_LC2-NaI-40mm_x_40mm.txt
次の例は、同じ測定機で、やはり遮蔽内でCs137の線源を使い、校正のチェックをしている様子です。
これが、測定開始2分後、120秒の様子。
さっきは、46分経っても、何があるか、ないのか、はっきりしませんでしたが、こっちは開始数秒で、
すぐにCs137の山が出てきました。これでも、0.25マイクロキュリー(9250Bq)のディスク状密封線源ではなく、
総線量で約900ベクレルのスパークギャップチューブというものを線源として使っていますし、しかも、
空のマリネリは入ったままで、線源はそのまた向こう側にあるので、ベータはマリネリのプラスチックで
かなりブロックされてるかと思います。逆に、鉛の遮蔽にはガッツリぶつかって、鉛の特性X線は、結構出てるかも。
また、そういった位置関係のせいで、バックスキャッターピークは、185KeVに出てないのかもしれません。
(後、この測定機の直線性が良くない、という可能性もあります。)
で、本題に戻ると、この様に、まだK40に何もカウントされてないくらいの出だしで、測定機の効率の良い
エネルギーの低いほうでもギザギザが酷くて大暴れしている状態でさえ、総線量がこの程度あるなら、
数秒ではっきり見えてくる、ということです。
しかし、この時点での、量的な推測や、分解能の数値(6.9%と出ている)は、まだまだあんまり当てになりません。
ピークがあるのは、もう間違いない、とは言うものの、Cs137の位置のカウント数は、まだ25です。
http://pico.dreamhosters.com/img/V60/2013_10_28_13_15_57-Cs137_in_LC2-NaI-40mm_x_40mm.txt
更に2分後、合計で、まだたったの4分です。
でも、既にエネルギーの低い方(左のほう)は、徐々に落ち着いてきて、セシウム137の32KeV、鉛のX線がくっきりと見えますし、
Cs137のコンプトン散乱が、出てきてる途中、という感じです。
それでも、K40の周辺は、まだまだです。(NaIの測定機は、CsIよりも高い方へ行くにつれての効率の下がり方が大きいので、
特に結晶が小さいと右の方は、遅かったりします)
また、分解能の数値を見るとなんと5.2%です!凄い、お前はLaBrか?打倒CZTを目指せるのか?
「ゲルマニウムの次に優秀な測定機」というのは、Ebayのオークションで値が付かず、ひっそり人知れず泣いていたところを
5万円もしない値段で私に拾われたお前の事なのではないか?などと舞い上がりたくなるのも、素人測定にはありがちですが、
まあ、8%から9%くらいで落ち着くんじゃないか?とか、思ってました。
http://pico.dreamhosters.com/img/V60/2013_10_28_13_17_58-Cs137_in_LC2-NaI-40mm_x_40mm.txt
合計で20分経過した時の様子。横軸のズームを変えて、全体像をチェックしています。
ようやく、K40が寝ぼけながら出てきたかな?という感じで、高エネルギー領域に Sovtube Detector に特有のパターンが
見えてきました。(3300から4000KeVにかけての持ち上がりです)
分解能も落ち着いてきて、それでもまだ6.9%です。その他は、特に目立ったところは、ありません。
Cs137の位置のカウントは、244になりましたので、校正の(いい加減な)チェックとしては、もうこんな程度でもいいと
思ったのですが、分解能がどうなるのか興味があったので、もっと放置してみました。
素人測定の気楽なところは、別にどなたかの依頼に正確な数値を出す為にやっているわけでもなく、
その時の状況や気分で、どうにでも測定時間を延長したり、カットしたりできる点です。
http://pico.dreamhosters.com/img/V60/2013_10_28_13_34_12-Cs137_in_LC2-NaI-40mm_x_40mm.txt
一寝して、起きてきた合計約7時間経過した時点の様子です。
な、なんと分解能は、まだ7%!凄い!私の持っている素人測定機の中では、一番の好成績です。
磁気遮蔽なし、温度補償なし、品質保証なし、のナイナイ尽くしの中では、正直感動的な数値です。
もちろん、普通のまともな測定機だと、7%なんて当たり前で、アマチュアでも、真面目な人は
6%台を目指して頑張ったり、実際に達成していますが、これは、オークションで買った品を
そのまま改良もせずに使っての数値で、売り手は確か8%台後半だと称して売っていましたので、
7%ぴったりなんて数値が出るなんて、思ってもみませんでした。
日ごろから、分解能はあまり気にしない私でも、大喜びです。
しかし、良いことだけではなく、K40が左に数十KeVズレていて、直線性が悪いことがわかります。
これは、 Sovtube Detector が金属などにかなり敏感で、磁気遮蔽をしてさえ反応することもあるので、
鉛の遮蔽の中に入れたことで、こうなったのではないか?と思ってます。
http://pico.dreamhosters.com/img/V60/2013_10_28_19_55_06-Cs137_in_LC2-NaI-40mm_x_40mm.txt
スペクトルを太線表示にして、右の方も全部見えるように表示してみました。
また、Xlogボタンを押して、横軸も対数表示にして左の方を拡大し、Ylogの縦軸の対数表示も値を大きくして、
スペクトルの下の方がより強調されて持ち上がる様にしました。
さらに、リニアライザーを使って、2MeVを中心とした領域を右にずらして、K40を合わせました。
そしたら、2614のトリウムのところにポチっと何かあるので、もしかしたら、こんなもので、大体合っているのかも。
(トリウムランタンマントルを入れたりして確かめないと、まだ、なんとも言えませんが)
前に述べた、 Sovtube Detector に特有のパターンは、3.5MeVから4.2MeVくらいに出ています。
これは、ADCのせいなのか、アンプのせいなのか、わかりませんが、非常に高いエネルギーの山などが、
この範囲で詰め込まれ、潰れてなっているようで、この測定機の半ば意図的な「仕様」らしいです。
高い方まで、無理して全部綺麗にしようとせずに、低い方で一番よい結果が出るように考えての設計と解釈されています。
他にも、そのうち実例を加えるかもしれませんが、とにかく、ヒゲとギザギザに飛びついてぬか喜びするのは、
注意した方が良い、ということです。
ヒゲや、ギザギザの盛り上がった頂点だけを見て有頂天にならず、谷間や割れ目にもしっかりと注目して
脳内スムージングをかけたり、実際にスムージングを入れたりしながら、そのスペクトルに過剰な期待も、
過度の落胆もせずに、淡々と艶々滑らかなスペクトルへの成長を見守っていくと、
スペクトルの出だしで、何がどれくらい分かるのか?という自分自身の判断能力と、
実際の測定機の性能についての「現実的」な理解が深まることでしょう。
まあ、素人に限らず、意図せずに自分の持っている測定機の「褒め殺し」をしてしまう場合もあるかもしれませんが、
宣伝したり、褒めたりするつもりで逆効果になったり、「胡散臭い」と思われたりする結果になるかもしれませんので、
過剰な喧伝はしない方が良いのではないか?とも思いますです。
気持ちとしては、自分の機械を褒めたい、作成者やメーカーを応援したい、という心は分かるんですが、
最小目盛りが1mmの物差しで百分の1ミリが測れる!凄い!と言ってみても、それが果たして応援になるのか、
メーカーや作成者が喜ぶのか、私はちょっと疑問です。
例えば、テレミノMCAは、凄い!数秒で0.1ベクレルが見分けられる!とか言い出す人が居たら、
私は、個人的には、ちょっとビミョー。
私の場合は、テレミノMCAの作者でもなく、単に機能拡張とか翻訳とかしてるだけなんで、いいんですが、
それでも、こっぱずかしいから、そういうのは出来たら勘弁してくれませんか?とか、思うかも。
でも、測定を繰り返せば、そのうちわかるだろう、とも思うし、素人測定にありがちなことでもあるんで、
2,3年は暖かく見守っていればよいのかもしれませんが。
また追加です。
現在、測定しているスペクトルの「滑らかさ」も結構大事ですが、バックグラウンドの場合は、
これがもう少し重要になってきます。
「特に、目視でスペクトルの形状を見て、色々判断しようという場合」に、
「バックグラウンドを差し引いたスペクトルを見る」のであれば、バックグラウンドにギザギザが
残っていると、それと測定中のスペクトルのギザギザが混じって相乗効果で余計酷いことになります。
これは、統計的な判断をする場合は、また、ちょっと変わってくるかもしれませんが、
それでも、検出限界などにも影響しますし、定量的な測定を目指す場合でも注意が必要でしょう。
ただし、「純粋に素人測定をしている場合」は、スムージングをかけて滑らかにしたバックグラウンドを使う、とか、
環境がほとんど変わらないなら、市民測定所などと違って、バックグラウンドはたまに長時間計って保存し、
多少のズレなどは、ソフトの機能や脳内補償で誤魔化す、といった手抜きの方法が有ります。
何故、こんなことを言うのか?と申しますと、私は、素人測定を「難しいもの」に、してしまわない方が良いと
思っていますし、「社会的責任」とやらも関係ない測定に於いては、その人が満足できる精度や信頼性を
得られるのであれば、別に何をやっても構わないし、あれこれやってみた方が面白いし、勉強になるし、
稀には他の人の役に立つ発見もあるかもしれないので、何でも好き勝手にやってみましょう、ということです。
で、やってみたら、私にも教えてくださいね。
追加です。
色々書きましたが、たとえこれらの勘違いやぬか喜びにはまってしまうとしても、
現在、どろどろにはまっていて、多少、顰蹙を買ったとしても、
私としては、素人測定を続け、そして、その経緯や結果を発表しているのを見るのは嬉しい限りです。
私自身、このサイトであれこれ書いてあることの中には、詳しい方が見ると眉をひそめる内容もあったり、
完全に間違っている点もあったり、やっている実験もお粗末なものもどんどん出していますが、
とにかく、素人が何か始めれば、間違えるのは当たり前で、それを過度に危惧したり、恥ずかしがっていたら、
学べるものも学ばないで終わったり、エネルギーを不必要な心配に浪費したり、自分のやりたいことに
無謀にも挑戦する気概をも失うことになりかねませんので、こんな程度のことでも、大真面目にやってる人間も居るし、
それが、何かの参考になったりする場合もある、というサンプルとして意図的にどんどん晒しています。
日本人は、とかく「見てくれ」や「体裁」を気にするあまり、あれこれ臆して馬鹿をやらない、
アホをさらすまいとして、外国語の会話が苦手になったり、「スペクトル測定は素人には難しい」などの
妄言にころっと騙されてしまったりする場合も多いので、まあ、あんまり長くこういう勘違いを続けない方が良いとは思いますが、
それでも「測定をしている人」のほうが、「何もやらずに軽蔑したり口だけの人」よりも、
何万倍も優れていると思いますし、個人的には、有り難いと思っています。
ただし、インチキやトリック、見世物測定をやってる人は、私は大嫌いです。
また、結果を恣意的に利用する目的だけで、測定(のポーズ)をしてる人が居たら、そういうのも嫌いです。
それも、偽造論文とかと同じ腐り方だと思うからです。
安全論的な考えを持っていても、危険厨的な見方をする人でも、「測定」という点では正直にやっている、
間違えながらも、学習が遅くてあれこれ言われたとしても、工夫を続けたり、
測定を積み重ねているような人が私は好きです。
たとえば、東海アマ様は、確かに勘違いをしている点なども、まだ残っているでしょうが、
あの年で、怪我や病気をかかえながらも、事故の後から各地でサンプルを収集したり、
今もどんどん測り続けている、という点だけでも、個人的には、賞賛に値すると思っております。
で、使用した機械やソフトのせいもあって、あるいは、学習不足のせいで、結果が正確ではない、完全に間違っていた、
という例もあっただろうと思いますが、まだ、床下には検体を保存している様ですし、以前の結果が正しくなかったと
ご自分で感じた時には、より正確に思える方法で再測定をする、などなど、やれる範囲で、十二分に実直に
測定している、と、私は思います。
そして、使用している機械も、前に比べればかなり良いものになり、ソフトや中身も改良が続けられている様なので、
ユーザーたちや代理店などが、メーカーや開発者を賞賛するだけの信者になってしまわずに、
どんどん文句を言ったり、注文を付ければ、きっと更に使いよくて、勘違いや間違いの入り込む余地の少ない製品に
育っていくことでしょう。
ちょっと追加:ただし、2014年1月現在においても、使用する測定器(IFKR−ZIP)の性能を過大評価し、ギザギザの集合体を「明確なピーク」だと繰り返し、更には、他の測定器や測定所を悪く言うことで、IFKR−ZIPの性能に対する信仰を守ろうとしているので、その点は、出来るだけ早く改めて貰いたいと思います。測定をしている他の人が迷惑していますし、測定について詳しくない人たちに誤解を広める結果にもなっています。
私の場合も、ユーザーの中に色々と無茶な事「も」言ってくれる貴重な方々が居て、そのお陰で、
ソフトの強化や拡張も進んだり、柔軟性が高くなったり、アイデアが沸いたりしますので、
非常に感謝しております。
無茶な使い方、間違った使い方「も」してくれる方は、(少なくとも私のような)開発者にとっては、凄く大事なのです。
ですから、測定機やソフトをやたらとチヤホヤせずに、どんどん色々と言いましょう。
特に、テレミノMCAの様な、完全無償で全てオープンというようなものと違い、良いお値段を払った機械やソフト、
また、蟹工船価格で、原価が賄えているのか心配なアルマジロなどと違って、原子力村ご用達価格の機械やソフトの場合は、
遠慮せずに、要望を伝えたり、カタログスペックや、ホームページなどでの謳い文句を満たすような性能を
「約束通りに」きちんと出すようにして貰うと良いでしょう。
テレミノMCAや無償ソフトなどの場合は、翻訳作業に参加してくれたり、ドキュメントの整備を手伝ってくれたり、ラドン検出器や
PMTアダプターなどのドキュメントの翻訳をやってくれたり、分解能補償機能の詳しいドキュメントの翻訳をやってくれたり、
プロチル様のやうに詳しい使用例などのドキュメントを作成して発表してくれたり、バグの報告をしてくれたり、
バグってるコードを発見して修正したコードを書いて送ってくれたり、日本語ドキュメントや英語ドキュメントをイタリア語に翻訳
してくれたり、他の言語のドキュメントを作ってくれたり、その他参加できる範囲で適当にのんびり何か手伝ってくれると
大変嬉しいです。
その逆に、「奮闘」のあまり、機能やマニュアルについてなどの「ウソ情報」を流すのは止めて欲しいです。
あ、スペクトル形成の話が、商品形成などの話に成長してしまったので、この辺にしておきます。
カナダ東部の森の中の腐葉土を(仮)測定の例
森の中の土のスペクトルの推移です。
測定器は、CsI(Tl)2.5インチ(63mm)で、結晶の大きさは市民測定所でよく使われている
AT1320Aと同じです。遮蔽は、再生鉛のブロックを適当に積んだ横置き型で、マリネリや
測定器の結晶付近は8cmくらいの厚さで、PMTの尻尾の方はその半分くらいです。
ただし、PMTの尻尾の後ろは、8cmの厚さがあります。
この例の様に、汚染が酷くない場合でも、本当に小山がある場合は、
右や左のギザギザが徐々に落ち着いて収束し、山も丸く、多少低くなります。
この例は、バックグラウンドがあんまり滑らかになるまで粘ったものではないし、
特に差分のスペクトルは、これ以上頑張っても、ギザギザの上下の幅は
小さくならないのではないかと思います。
最初が、測定開始から25分くらいの時のスペクトルです。
セシウム137の小山の左右は、おおよそ+−0.01cpsのギザギザ。
山があるのは、この時点でも分かりますが、右や左に他の小山があるのか、とか
「確かなこと」がまだまだ良く分からない状態。
この段階で定量的な推測をする場合、ベースラインは、差分スペクトルの
ギザギザの上下の揺れの中間辺りと想定した方が良いでしょうし、
山の高さだけで判断したり計算すると、誤差が酷くなるかも。
こういう場合は、古典的に適当な区間(ROI)のチャンネルのカウント数を
足して、それを秒数で割ってレートを出して、適当な係数をかけて計算する、
といった「正攻法」を使った方が良さそうですし、山の高さがこれ以下の
もう「定量限界以下でしょう」というケースなら、尚更かも。
測定開始から1時間ちょっと。ギザギザは、+−0.005cpsくらい。
Cs137の小山はBG差分だと、662keVのチャンネルで
まだ50カウントくらいしかありません。
測定開始から5時間半くらい。
ギザギザは+−0.003cpsくらいに減少。そのギザギザの高さもBG差分で60カウントくらい。
測定開始から10時間弱。
ギザギザは、+−0.0025くらい。
定量はともかく、「ピークがある」という点では、小うるさい学者さんでも
多分、文句は言わないでしょう。
測定開始から17時間弱。
生スペクトルの方のセシウムの小山が丸くなってきました。
ギザギザの幅は、10時間弱の時からあまり減っていません。
(エネルギーの低い方の暴れ方は、少し収まりましたが)
既に、検体のスペクトルの方がBGよりも滑らかで、
これ以上やっても、多分大きな変化はないので、この仮測定は
これで打ち止めにしました。
662kevのチャンネルで、全部で3000カウント以上、
BG差分でも700カウント以上あるので、素人測定としては、
十分すぎるほどかも。
また、測定環境も、(今のところ)まあまあ安定していることが分かります。
素人測定に於いては、特に素人用機材を使っている場合、測定環境の安定性に
十分注意する必要があります。
BG差分スペクトルが、広い範囲でゼロより下に沈んだりするのは、
測定環境が変化した可能性や、BGスペクトルが妥当なものでは
無かった可能性を示唆していて、測定環境のチェックやBGの取り直しや
測定のやり直しが必要かもしれません。
また、測定する場所を移したり、線源を移動したりした場合は、
「別の測定環境」と考えて用心しないと、私もやったことがありますが
勘違いに繋がったりします。
Giza Giza のページに、再度「ギザギザやヒゲ」と「ピーク(山)」の違いや見分け方に付いて、書いてみました。
Visual Peak Detection 目視によるピークの明確さの判定法も是非ご覧下さい。
Maple Syrup Spectrums や Maple Syrup Spectrum N3 にメープルシロップの測定におけるスペクトル形成の例がありますので、ご覧ください。
Sirouto Sokutei Course 、 Basics Of Measurement 、 Quick And Easy や Channel Pitch にも、関連事項がありますので、ご覧ください。
日本語ページインデックス や 掲示板 には、他の情報も沢山あります。