Pico Tech - Basics Of Measurement

Radiation Detection  / Detector Selection / Preventive Measures / 日本語ページインデックス ... English Documents / 掲示板

測定の基本 Basics of Measurement

何かを測定する時に、非常に大事なことがあります。

それは、何かわからないものを、「わかっているもの」と比べることで、共通な点や違っている点を見つけ出す、ということです。

「わかっているもの」が無い場合は、色々なわからないものやわからないことを比較し、その違いから「わかっていること」を推測し、
それを積み重ねて段々と「わかること」の範囲を広げていくことになり、素人にとっては、ちょっと荷が重いかもしれません。

簡単な例で言えば、定規があれば、そこそこの精度で長さが測れます。
しかし、定規も、単位となる長さの概念も無ければ、自分の指の長さを「仮の基準」に使ったりして、そのうちに「標準的な指の長さ」というのを相談して決めて、それを元に定規を作ったり、更に精度の高い基準を使うようにしたり、工夫が必要になります。

放射線測定の場合は、単純に長さを測るよりも、微妙で、しかも技術的に複雑で、そして色々な要素に影響されてしまうので、「わかっているもの」の無い状態から始めるのは、さらに面倒なことになるでしょう。


基準になる物が必要

なので、スペクトルを調べようとする時も、「素性のわかっているもののスペクトル」がとても大事になります。

「素性がわかっているもの」としては、俗に「線源」と呼ばれる、どこかの誰かが既に測定して、その特性がわかっているのもが売られています。
また、代用品として、「やさしお」や「トリウムランタンマントル」の様に、どんな放射線を出すかがほぼ分かっている、安価な物質を利用することも出来ます。

更には、何の基準に使うのか?という目的によって、横軸(ゲインやエネルギー)の校正や調整に便利な、単一、或いは少数の目だったピークがある線源(K40,Cs137など)、横軸の直線性の調査や調整に便利な複数のピークのある線源(Eu152やトリウム系、など)、そして、ありがちな汚染の定量的な推測や校正に使う汚染の程度の判っている線源(標準汚染米など)といったものがあり、それらを別々に、あるいは組み合わせたり、また時には流用したりして工夫しながら測定の精度を高めていくことになります。

ただし、どんなものを基準に使うかによっても測定の精度が影響されるので、使用する測定機の精度、それを使う人間の知識や技量、
そして測定の目的に見合った線源を使い、測定の基礎になる情報を徐々に積み上げて行く必要があります。

逆に言えば、測定器の質、測定をする人の質、そして線源の質など要素のうち、一番低いものによって測定の信頼性が制限されてしまうので、
測定の目的にもよりますが、どの要素を向上すると測定の精度が上がるのか?などを考えながら一つ一つ前進していくと良いでしょう。

繰り返しになりますが、何かを測定しようとするなら、比較の元になる、素性のはっきりした物、測定の基準になる物が必要、ということです。
これがないと、測定をしても何がどうなっているのか良く分からない、という結果になりがちです。(そういう経験を重ねるのも悪いことではないと思いますが)

注:基準になる物質も、放射性物質ですから、取り扱いに注意しましょう。物によっては、結構な線量がありますし、単純に物質として毒性を持っているもの、密封などされてなくて、注意を怠ると周辺に散乱してしまったり、自分や他の人の被爆に繋がる可能性などもあります。ミイラ取りがミイラにならない為にも、「線源」、そして測定検体の取り扱いには、東電や政府のような「安全過信」や手抜きをせずに、十分過ぎるくらい注意をした方が良いかと思います。


まず、背景(バックグラウンド)を確認する

スペクトル観察の場合、基準になる物質を測定する前に、もう一つやっておくことがあります。
それは、その測定状況の何も放射性物質を追加してない状態でのスペクトルを測定し、記録しておくことです。

遮蔽の中に既に入っている測定機の場合は、そのまま遮蔽の中のスペクトルを取ることになりますが、
遮蔽の外も測定できるなら、それも記録しておくと良いでしょう。

この様な、バックグラウンドのスペクトルは、これから測定する放射性物質がその上に乗る前の、
土台部分になり、これを差し引いたりすることで、測定する物質から出る放射線のみを推測するのに使います。

逆に言うと、背景のスペクトルがないと、調べたい物質の放射線を見ているのか、背景の放射線を見ているのか良くわからない、ということになります。

また、このバックグラウンドのスペクトルをとる時には、じっと我慢して、スペクトルが滑らかになるまで待つと、後で差し引いた時にスペクトルがとてもギザギザになってしまったり、その結果あるのかないのか定かではないピークを確実に有るかの様に誤認してしまう度合いを減らせます。

ただし、長時間測定すると、温度の変化などでスペクトルがずれて、いわば「ピンボケ」みたいになることもあるので、適当な間隔でスペクトルを保存し、一番好ましいと思われるものを測定時の背景として使ったりすると良いかと思います。

テレミノMCAを使っている場合は、ファイルメニューのエキスポートで、スペクトルファイルの保存も出来ますが、自動定期保存機能を使い、テレミノ形式とSPE形式の両方で保存しておくと、後で役に立ったりします。また、そのスペクトルの画像も一緒に出来ます。
更に、Refボタン、そして、バックグラウンドの保存用のBKGボタンをクリックして、スペクトルをテレミノMCA内部にも保存しておくと比較しやすいです。なお、テレミノMCA拡張実感版の9月公開予定のものからは、Refボタン、BKGボタン伴に、右クリックで記憶、左クリックで表示と非表示の切り替えになります。


基準物質の情報を確認する

基準になる物を入手したら、そのデータを測定し、素性のわかっているもののスペクトルが、予想される形で見えていることを確認する必要があります。
たとえば、トリウムランタンマントルだったら、この様に色々な人が色々な機械で測定した結果があるので、自分の機械の結果と比べてみると良いでしょう。 Thorium Lantern Mantle Spectrum

どんな形でスペクトルが見えるかは、使う機材やソフトによっても変わり、さらに、スペクトルの場合では、どのエネルギー領域を見ているのか?
どんな表示形式化?リニア(元のままの表示)、Log(対数表示、スペクトルの下の方が拡大され、上の方が圧縮され、下の方の微妙な違いが分かりやすくなり、「桁数の違い」がわかりやすい)
横軸(X、エネルギー)の倍率や、チャンネル設定、ゲインはどうなっているのか?
そして、バックグラウンドを差し引いたスペクトルなのかどうか?
などの設定によっても変わってくるので、同じスペクトルを色々な違う設定で観察して、どの設定でどういう効果があるのかにも慣れましょう。

これらは、使用する機材やソフトによっても、色々と呼び方や設定方法に違いがあったりするので、マニュアルを見たり、他の詳しい人に教えて貰って練習しましょう。
メモをとったりして「勉強する」のも大事ですが、何よりも色々な設定に変えて何度も観察して、その操作やスペクトルの特徴に慣れて目に浮かぶくらいになると、違うものに接した時に気づきやすいですし、どこが違うのか?とか、更にはどうして違うのか?などが、推測しやすくなります。

また、測定時間はどれくらいか?
遮蔽は使用しているのか?
測定したものの量や形状、密度や詰め方、そして、測定機との位置関係はどうか?
測定を左右する、温度や湿度や天候はどうか?
測定機を設置した場所の環境は?
その場所の背景の放射線や自然核種、そして汚染の状況はどうか?
テスト用の線源や測定用の物質が近くにあるか?
などなども、測定に影響したりするので、注意し、メモしたり、スペクトルファイルのノート欄があればそこに記録しておきましょう。


基準になる物質を使って、機器の調整をする。

メーカーものの機械でも、これはやった方がよいですし、 自作の測定機やアマチュア用の測定機を使っている場合は、この作業が欠かせません。
まずは、「やさしお」などK40を含むものか、近所の土などのセシウム137しっかりと含んでいるものを使い、そういった基準になるピークが、所定のエネルギー(又はチャンネル)に出ているかどうか調べ、ずれている場合は、それぞれの機器やソフトのやり方に従って調整します。

テレミノMCAを使っている場合は、このやり方が、 Theremino Mca How To Ja に解説してあります。

また、測定をする直前にも、こういった確認と微調整を行うと、測定の信頼性が高まります。
逆に、やらない場合は、それでもはっきり山が出るようなら、該当物質がありそうかどうか?位は言えるでしょうが、量的な推測をするのが難しくなったりします。
ただし、使用しているソフトによっては、少しのズレはソフトの方で修正して色々推測してくれる場合もあります。
なので、御使用の機器やソフトによって、この点について細心の注意を払わないとならない場合と、あまり気にしなくても良い場合があるので、機器やソフトの特徴を調べて、使用法に慣れましょう。

直線性について

更に、横軸の調整には、一つの物質が所定の位置にでるかどうか?だけでなく、複数の物質や、一つの核種の色々なピークが、みんな所定の位置に出るかどうか?という「直線性」などの問題もあります。
これも、メーカーものの測定機では、まあまあの直線性が期待できる筈ですが、自作やアマチュア用の測定機では、直線性がある程度ズレているのが当たり前です。
なので、使用する測定機にどんな特性が期待できるのかどうか?によって、「直線性」の調査や調整にどれだけ時間やエネルギーを費やす価値があるのか?が、変わってくるので、注意しましょう。
アマチュア用や、安価な測定機では、直線性が完璧でないことを嘆いたりする必要はなく、必要なら単にどのエネルギーの位置がどんな風にずれるのかをしっかり調べて、測定結果をその調査に基づき補正したりすれば良いのですから。

分解能について

色々な測定機を持っていたり、色々な測定機に接する機会があったりすると、それぞれの測定機の分解能が気になったりします。
「分解能」というのは、その測定機の「ピント合せの鋭さ」みたいなもので、NaI(ヨウ化ナトリウム)やCsI(ヨウ化セシウム)の結晶を使った良くある測定機ではセシウム137のピークのエネルギー位置での値として、パーセントで表示されたりします。
FWHMという頭文字と一緒に表示される場合も多く、この数値が小さいほど分解能が高く、細かな違いまで見分けられることになります。
逆に、この数値が大きいと、ちょっとピンボケしたように、なだらかなスペクトルになることが多く、細かい隣接したピークがくっついて、良く分からなくなったりします。
なので、少し詳しくなると、この分解能をとても気にして一喜一憂したり、酷い場合には分解能の悪い測定機や、それを使っている人を蔑んだりしてしまう場合さえもあります。
しかし、たとえ分解能が多少悪くてもある程度のことは分かりますし、あまり分解能に囚われるよりも、折角手にした測定機をまずは使いこなし、どんどん測定して経験を積み、他の人とスペクトルを交換してデータを共有する事にエネルギーを使った方が気分的にも、そして何よりも被爆の予防の観点からも好ましいと思われます。

ただし、もし、分解能の優れた機械を購入する財力や機会に恵まれたなら、良く見える測定機を持っているに越したことはありません。
その場合でも、分解能は測定機の性能の一部分に過ぎず、「感度」も非常に重要だったり、低エネルギーや高エネルギーが見えるかどうか?なども大事な場合がありますので、「測定の目的」に合せて総合的に判断が出来ると良いでしょう。


実際の測定

測定機を入手し、その使い方も学び、背景のスペクトルもとり、基準になる「線源」を使って測定機の調整/校正も終わったなら、実際の測定を繰り返して、目の付け所や時間配分やその他の事柄に慣れ親しんで学んでいくことになります。

スペクトルの見える測定機を手にした人がしばしば陥る誤解は、スペクトルの全ての凹凸が放射性物質の指紋の「ピーク」であるかのように見えてしまう、思ってしまうことです。

分解能のところでも書きましたが、測定機にはそれぞれどれくらいまで細かいものが見えるのか?という限界があり、それ以下は、良く見えません。
特に、測定を開始して直ぐのギザギザや、電気的なものや他の要因で起こるノイズなどは、放射性物質のピークとは通常全然関係ないので、これらのエネルギーを調べてもほぼ何も分かりません。
従って、スペクトルがどんな風に出始めて、それがだんだん滑らかになって、最終的にどんな「山」が出るのか?という、測定のサイクルを繰り返して、どのような凹凸に注意が必要なのか?が分かるようになると測定も楽になり、かつ、もっと興味深くなります。

結晶の大きさが小さい測定器を使っている場合、スペクトルが滑らかになるまでには相当の時間がかかったりします。私が4ccの結晶の測定器を使っていた時は、最低数時間、通常十数時間から数十時間測るのが普通でした、
スペクトルが滑らかになるまでの時間は、それぞれのチャンネルのカウント数などによって異なり、高濃度の汚染のあるものだと、その汚染に関連する山の部分は毎秒のカウント数(cps)が多いので、早く滑らかまろやかになるのに対し、特に効率が低いエネルギーの高い方などでは、非常に時間がかかったりします。
また、1チャンネル当たりのエネルギーの幅(チャンネルピッチ)やスムージングの有無やその強さによってもスペクトルが落ち着いてくる時間は変わります。

そして、この「スペクトルの成長」の様子を理解しないと、「(三角に)尖ったスペクトルが良いスペクトルなのだ」とか、とんでもない誤解をしたまま何ヶ月も何年も奇妙な解釈に捕らわれたり、回り道をすることになりがちです。
従って、どれくらいのカウント数で、測りたい領域やその周辺のスペクトルが落ち着いて、測定の信頼性が高くなってくるのか、という点にもよく注意して慣れ親しむようにすると良いでしょう。

これには、使用する測定機でどんな核種のどんなスペクトルが見えるのか?という例があるなら、そういうものをどんどん見て、慣れ親しむのがとても有効な方法です。
テレミンMCAのスペクトルについては、掲示板にも沢山ありますし、以下のページにもあります。

Theremino Mca Spectrums

また、このページには、よく見る核種などのスペクトルが集めてあり、色々な機種で測ったものもあるので、比較したり、慣れたりするのに便利です。

Spectrum Examples

あるいは、AT1320Aという測定機や似たようなスペクトルが出る測定器をお使いなら、Twitter の「ふじみーる」さんをフォローすれば、毎日のように色々なスペクトルにマーカーの付いたものを見ることが出来、スペクトルの出方やその解釈などについて非常に良い勉強になります。 
この機械は、割と標準的な造りなので、他の機械でも、これと似たようなスペクトルが出る場合も多いので、とても参考になります。

https://twitter.com/fujimiiru/status/390225751045197824

http://twilog.org/fujimiiru/

そして、 Lab Links のページには、スペクトルを公開している色々な測定所へのリンクがあるので、ご利用ください。

 
ただし、御使用の測定機のスペクトルやソフトに癖があったりすると、他の機械の情報は(特に慣れないうちは)かえって混乱する元になったりしますので、最初は、同じ機械か似たようなスペクトルの機械の測定結果を重点的に見てみると良いでしょう。


さて、実際の測定で、直ぐに「何ベクレルあるか?」というのが、はっきりと間違いなく分かることを期待してしまう方も多いかと思いますが、実はそう簡単ではありません。
物事を測定する筋道として、まずは、何があるのか?というのが最初で、それから、どれくらいあるのか?というのが続きます。
しかも、どれくらいあるのか?というのは、とても沢山の要因に影響されるので、それら全てをきちんと管理できるのでない限り、「正確な量」「断定できる量」というのは、出せません。

あくまでも、「多分、これくらいなんじゃないだろうか?」「おそらく、これくらいの誤差になるだろう」「もしかしたら、これくらいはあるかもしれない」などなどといった、不確かな結果が出るのが当たり前の世界なので、完璧で完全に断定的な結果でないと満足できない人には残念ながら向きません。

「ある程度の範囲の中」でなら、「かなりの自信が持てる結果」というのは、使っている測定機やその使用法などに慣れれば得られますし、自分がその結果を元にして色々な判断を下すのはともかく、それが「他の人にとって役に立つか?満足できるか?」というのは、それぞれの場合によりけりなので、注意が必要です。

さらに、放射能測定には、「必ず」バラツキがあり、そのバラツキはスペクトルの滑らかさと関係があり、スペクトルが落ち着いてバラツキが少なくなればなる程、測定の信頼性が向上するのですが、それには測りたい物質のピークの位置で十分なカウント数が数百、数千カウントになるまで測る必要がありますし、そうして辛抱強く測定しても必ず誤差があって+−5%以上の精度にはならないとも言われています。その上、繰り返し測ると、その結果も(誤差によりけりで)異なるのが普通ですので、「常に」現在どれくらいのバラツキがあるのか?というのを意識しながら考えた方が良いです。

これらの基本的な事柄を学ばなかったり、忘れてしまうと様々な勘違いの元になるので、十分気を付ける事をお勧めします。

また、最初の方に書いたように、測定の精度は、測定機や測定を行う人や基準になる物質などの色々な要素のうちで「最悪」なものによって制限されてしまうので、メーカーものの測定機を使い、メーカーやナントカ協会提供の線源などを使っている場合には、「測定者自身」がその制限要因になってしまうこともありがちです。
これは、測定に慣れてない方の場合は、仕方の無いことですが、だからといってその状態に留まっていたら、何時までたっても自分自身の為になる測定すら出来ないままで終わってしまうかもしれません。
ですから、最初から難しく考える必要はありませんが、経験を積んだり勉強する努力も、やっぱり必要だと思います。
そして何より、どんどん測定すること。測定して、わからないこと、不思議なことを見つけては、その理由を考え、どうしたらその理由らしきことを確認できるのか考え、その考えに沿った実験を行う、といったことを繰り返して、色々なものの特長を捉えていく必要があります。

従って、「ボタンを押せば何がどれだけ入っているか分かる」、という風に自動化、単純化されていませんし、たとえ結果が出ても、それをどう生かすか、それにどう生かされるか、殺されるかも各自の判断次第ですので、結構複雑な世界に足を踏み入れるのだという点は忘れない方が良いと思います。

この様な状態にとってもご不満のある方は、東電や政府、そして学者さんたちとメーカーなどに文句を言っていただきたいと思います。

今後、素人がもっと簡単に学習できたり、利用できる測定機が出てくる可能性もありますが、逆に、情報や技術が統制されてしまう、というヨーロッパの中世のような酷い状況になってしまう可能性もあるかもしれないので、あまり「楽観し過ぎず」、「悲観し過ぎず」、最悪と最高の可能性の両方を目を背けずに見据えながら、自分の歩く道を決めて頂ければと思います。


では、まず何が分かるのか?

(初めのうちは)量の推測をするのが難しいとしたら、始めたばかりの人は、何がわかるのか?というと、例えばセシウムの山の出方に慣れてしまえば、山がはっきり見えたならセシウムが含まれているのは簡単にわかるようになります。
例えば、それが食品で、自分や家族で食べようとしていたものの場合、「セシウムが入っている」ということで、その人なりの判断ができるでしょう。

もう少し慣れると、ある程度、量の感覚が分かってきます。一定の重さの物質を測っていて、片一方で測定開始からグングンセシウムの山が伸び、もう一方は、なんだかショボショボしていたら、どちらが沢山セシウムを含んでいるか、明らかでしょう。

また、二つとも同じような山の出方をした場合、重さが軽いものの方が、キログラム辺りのセシウムの量=濃度(Bq/kg)が多い、というのも分かるでしょう。

更には、他の誰かが高い精度でどれくらいの汚染があるか調べた物質があれば、量や密度などなどの測定の条件が同じならば、それと比較して汚染が酷いのかどうか?も分かるでしょう。
基準汚染米や、汚染土壌などが、残念ながらこういうことに役に立ちます。

この様な、基準になる物質で、50Bq/Kgと100Bq/Kgと200Bq/Kgのものがあった場合、それらと山の高さなどを比較すれば、大体の程度は分かるでしょう。(あくまで、同じ測定条件で測っているなら、の場合ですが。他の核種が混ざっていたり、その割合が違う場合は、単純な比較が出来なくなり、考えたり計算する必要が出てくるので注意が必要です。)

そして、天秤で比較するようなやり方をするうちに、「一定の条件の範囲内」であれば、どれくらいの高さのピークが、どの程度の汚染に相当するのか?というのを割り出して、定量的な推測をする為の換算係数を計算したり、それを使って汚染の程度を計算することも出来る様になるでしょう。

また、(定量機能のある測定器やソフトを使っている場合なら)測定機が計算して推測した量や、あるいは、自分で計算した推測の信頼性や、その癖が分かってきて、特に(より一層の知識や経験や注意が必要な)測定機の性能の限界に近い方での測定と判断や、色々な物質が混じっていたりして、それらの影響を考慮しないとならない場合の判断など、より複雑な場合にも徐々に慣れてくるでしょう。

これくらいになると、市民測定所の人たちがどういう勉強や苦労をして、「正確な測定」をしようと心がけているのかも良く理解できるようになるでしょうし、測定機の性能や価格や色々な事柄や矛盾点なども分かってくるでしょう。

また、セシウム(というかガンマ線やエックス線)だけが問題でなく、ベータ線核種やその制動X線の危険性など、他にも色々考えないとならないことが山積みで、十分な研究さえなされてない様に思えるのも分かるようになってきたりするかもしれません。


次のステップ

スペクトルのとれる測定機をまだ持っていない場合 ==> 測定機を買いましょう。 Detector Selection

「最低予算」はアルマジロType1の1万6千円。でも、この場合、分解能はまずまずですが、感度が低い(それでもエアーカウンターなどより相当良い)ので、凄く汚染された物やテスト用の強い線源などを測るので無い限り、スペクトルが見えてくるまでかなり時間がかかります。

なので、お勧めは、アルマジロのType3や、チャッピーデジタル211など、結晶の大きさが1インチ以上のものです。 Sovtube Detector (通称ロシアン、又はAtomSpectra)の売り物があれば、2.5インチCsIでも、1.5インチNaIでも、お買い得です。1.5インチNaIが4万円程度で買えることもあります。

食品検査をしたい場合は、理想的には2インチ以上の結晶の大きさがあるとよいでしょう。スーパーアルマジロGS1100Proと2インチNaIの組み合わせのシステムFUIジャパンの2インチ(または3インチ)のキットSovtube Detector の、2インチ、2.5インチ、3インチの検出器などがこれに該当します。

予算が許す限り、出来るだけ結晶が大きくて、感度の高い測定器を買うことをお勧めします。これは、測定にかかる時間、スペクトルの成長を理解する時間、その他何をするにしても、感度の高い測定器だと飛躍的に早く行うことが出来て、学習効果も飛躍的に向上し、色々な「ありがちな誤解」「珍しい変な思い込みや勘違い」をしないで済む可能性が高まるからです。

スペクトルのとれる測定機を既にお持ちの場合 ==>

  1. まだお読みでない場合は、素人測定のお勧めコース Sirouto Sokutei Course をご覧下さい。
  2. テスト用線源を使ったりして、山が所定のエネルギーのところに出るか確認、調整しましょう。 テレミノMCAなら、 Theremino Mca How To Ja をご覧下さい。
  3. バックグラウンドを測り、スペクトルを記録しましょう。 
  4. 色々測定して、スペクトルを保存しましょう。この際、スペクトルの画像、スペクトルのデータ、そして測定の日時、天候、検体の重さや体積や容器などの情報も記録しましょう。
  5. スペクトル早分かり Quick And Easy のページなどを見て、知っていると良い事柄の(再)確認や復習をしましょう。
  6. スペクトル形成の過程と、注意点 Spectrum Formation ... ギザギザやヒゲとピークの見分け方 Giza Giza などに慣れましょう。
  7. 目視によるピークの判定法 Visual Peak Detection に慣れましょう。
  8. 最初は、分かりやすいもの、例えば、Cs134とCs137の山の出方に慣れ、そして、良く見かける「自然核種」と呼ばれるものに慣れ、段々と見分けが付く核種のレパートリーを増やしていきましょう。
  9. Spectrum ExamplesLab Links などを見て、色々なスペクトルで、どの核種がどんなピークを出すのか?に慣れましょう。ピークは、混ざったり、見えにくかったり、ずれたり、状況によって見え方が違います。同じ山でも、違う場所からみたり、違う時間に見たり、違う天気のの時に見たりすると見え方が変わるのと、似たようなものです。
  10. Isotopes And Peaks に良く見かける核種のピークの出る位置と、その高さの割合の例を集めてあります。このような情報を使い、ピークの位置だけで、その核種があると思い込んでしまうのではなく、複数のピークの存在と、その高さも核種に特有の指紋に一致しているか考えましょう。
  11. よく間違えやすい例や、特殊な例などを学んで、もっと詳しくなりましょう。 Separating Pb And I
  12. 御使用の測定機やソフトによっては、核種判定の支援をする機能があったり、定量の推定をする機能があったりするので、その使い方や注意点、限界などを学んで活用しましょう。
  13. 日本語ページインデックス や、他の参考資料や説明をご覧頂きますと、ありがちな間違い、勘違いを避けることができるかもしれません。
  14. 掲示板 にも、簡単なことから、詳しいことまで、色々な情報がありますのでご覧ください。投稿したい方は、私までメールでご連絡ください。パスワードを発行いたします。

Last modified : Tue Nov 4 10:46:10 2014 Maintained by nkom AT pico.dreamhosters.com