チャンネル(横軸)設定 (チャンネルピッチ) Channel pitch
測定をしようと思うとき、出来るだけ精度の高い測定をしたいと思うのは人情でしょう。
その結果、「チャンネル数が多い程良い」、とか「1KeV当たりのチャンネル数も多いと細かく分かる」などと誤解してしまう場合も多いように思います。
例えば、素人測定でよく使われる、「CsI(Tl)」(ヨウ化セシウムのタリウム漬け)や「NaI(Tl)」(ヨウ化ナトリウムのタリウム漬け)の測定器の場合、662KeVでの分解能が、頑張っても6%台で、通常7%から9%くらいの物が多いかと思います。
この様な測定器を使っている場合、1チャンネル当たり1KeVといった設定にしても、それぞれのチャンネルの「ヒゲ」や「ギザギザ」は、確率的なバラつきなどの結果だったりして、「ピーク」としての意味はありません。
また、それぞれのチャンネルにカウントされるパルスの数は、チャンネルが多いと少なくなるので、言ってみれば、やたらとチャンネル数を増やすとそれぞれのチャンネルの感度が下がり、精度を上げるどころか下がってしまうことに繋がりかねません。
結果として、スペクトルのギザギザがなかなか滑らかにならず、「意味のある凹凸」がはっきりと見えてくるのを遅らせます。
従って、チャンネル数は、少なめに設定することをお勧めします。特に結晶が小さい測定器を使っている場合は、もっと少なめにすると、よいでしょう。何故なら、感度の不足を補う為の長時間測定を行うと温度変化やそのほかの環境の変化などで、分解能が余計悪くなったりして、チャンネルを細かく設定する意味が更に薄くなってしまい、いたずらに時間がかかるだけになってしまうからです。
個人的には、3000KeV(3MeV)程度の領域までの測定器なら、512チャンネルもあれば十分だと思います。ただし、好みの問題もありますし、測定の目的などによっては、ギザギザがあった方が良い場合もあったりするので、これも各自で色々試してみることをお勧めします。
テレミノMCAの場合は、チャンネル倍率を0.2倍「x0.2」にするのが良いでしょう。最終的なチャンネル割り当ては、「ゲイン」と画面右側の下の方の「エネルギー校正スライダー」によって決まります。
ベクモニの場合は、チャンネル数を512くらいにして、チャンネルピッチを0.1、そして、K40が200チャンネル前後になるようにすれば良いでしょう。
これらの設定の意味は、より微妙な測定をしようとすればするほど、重要になってきます。
ただし、スペクトルのギザギザを積極的に利用して、微妙な汚染の山を見つけようとする場合には、細かいチャンネルピッチにした方が分かりやすいです。
例: 約7センチの鉛の遮蔽の中で、日本から送られてきた小包の箱を潰してCsI2.5インチで測定しているもの。約12時間後の様子。
左は、チャンネル倍率が0.2で。ギザギザがとても少なくなってますが、右のチャンネル倍率0.5は、まだまだです。両方とも、スムージングはかけていません。
左が、1チャンネル当たり、約8KeV (1000KeVを122チャンネルでカバーしている)、右が1チャンネル当たり約3KeV (1000KeVは、305チャンネル)。
ちなみに、Cs137の小山がありますが、これは、遮蔽自体(アメリカ製でアリゾナ産の安い再生鉛、又は、その梱包の箱)に含まれるセシウムと思われますが、現在調査中。日本からの箱は、遮蔽内のバックグラウンドと比べて、K40(とそのコンプトン散乱)と、トリウム系が少しあるのが見えるだけでした。
* 後日、このセシウムの小山は、測定器のヨウ化セシウムの結晶自体の自己汚染と判明しました。測定器を販売したSovTubeさんは、測定器の交換もすると言ってくれましたが、この測定器については、汚染の程度が少ないので交換せず、汚染がこの数倍あったものだけ、交換してもらいました。(送り返す送料は、自分持ちです)。
チャンネル数が少ない測定器で、わかりやすいスペクトルが得られている例としては、三田さんのAT1125Aが挙げられます。
ふじみーるさんを始め、多くの市民測定所で使われている同じAtomtexのAT1320Aも、チャンネルピッチは、あまり細かくありません。
多少追加です。
九州のkokikokiya様が、ベクモニでチャンネルピッチを変えて測定してみた結果があるのですが、
それを見ると、「ベクモニの場合」は、テレミノMCAよりも、若干チャンネルピッチを細かくした方が
良いのかもしれない、と、思いました。
http://pfx225.blog46.fc2.com/blog-entry-2021.html
ただし、測定時間がとっても凄く短いので、もっともっと長く長くしつこくスペクトルがすっきり滑らか艶やかになってくるまで
測ったりして試さないと、よく分からないとも思います。
また、ヒゲはヒゲで、ピークかどうかは、谷間や割れ目も見ながら考えないと勘違いをすると思います。
つまり、スペクトルがギザギザの場合は、脳内スムージングをかけるか、スムージング機能を使って、
スペクトルが十分形成された結果を推測しないと、間違うことがあるので、要注意です。
これは、スペクトルの出始めの分解能の数値にも言えて、ピークの先っぽが少し丸まって落ち着いてくるまでは、
FHWMの値が小さくて、ぬか喜びをしてしまうこともあるでしょう。でも、それは、出だしの尖ったピークのせいであって、
本当の値とは言えないと思います。それに、FWHMに(過剰に)一喜一憂するより、他に考えた方が良さそうな事も
沢山あるのではないか?とも思います。
Maple Syrup Spectrums に上記のメープルシロップの測定におけるスペクトル形成の例がありますので、ご覧ください。
Quick And Easy 、 Spectrum Formation 、 Giza Giza 、 Visual Peak Detection にも、関連事項がありますので、ご覧ください。
日本語ページインデックス や 掲示板 には、他の情報も沢山あります。